2016年11月09日 16時38分

高橋まつりさん母「社員の命を犠牲にして優良企業と言えるのか」過労死シンポ発言全文

高橋まつりさん母「社員の命を犠牲にして優良企業と言えるのか」過労死シンポ発言全文
亡くなった高橋まつりさんの母、幸美さん

過労死等防止対策シンポジウム(厚生労働省主催)が11月9日、東京都内で開かれ、長時間労働の末に過労自殺した電通若手社員、高橋まつりさんの母、幸美さんが登壇。まつりさんが亡くなるまでの2人のやりとりや、現在の心境を打ち明けた。

幸美さんによると、まつりさんは2015年10月、「今週10時間しか寝ていない、会社辞めたい」「休職するか退職するか自分で決めるのでお母さんも口出ししないでね」と話していたという。また、11月には、電通事件と呼ばれる1991年の電通若手社員の過労自殺の記事に触れ、「こうなりそう」と語っていた。

自殺する直前の12月、「大好きで、大切な母さんさようならありがとう、人生も仕事も全ても辛いです。お母さん自分を責めないでね。最高のお母さんだから」とメールが送られてきたことを打ち明け、声をつまらせた。

幸美さんは、「自分の命よりも大切な愛する娘を突然亡くしてしまった悲しみと絶望は、失った者にしかわかりません。だから、同じことが繰り返されるのです」と語ったうえで、過労死や過労自殺の防止に向けた今後の対策について、「残業時間の削減を発令するだけでなく、根本からパワハラを許さない企業風土と業務の改善をしてもらいたい」と強調した。

幸美さんが語った内容の全文は以下の通り。

●「死んじゃだめ」と何度も言った

こんにちは。私の最愛の娘は、高橋まつりといいます。

娘は昨年12月25日、会社の借り上げ社宅から投身し、自らの命をたちました。3月に大学を卒業し、4月に新社会人として希望を胸に入社してから、わずか9カ月後のことでした。

娘は、高校卒業後、現役で大学に入学しました。大学3年生の時には、文部科学省の試験に合格し、1年間、北京の大学に国費留学しました。帰国後も学問にはげみ、持ち前のコミュニケーション能力を活かし、就職活動にのぞみました。そして、早い時期に内定をもらい、大手広告代理店に就職しました。

娘は「日本のトップの企業で、国を動かすような、様々なコンテンツの作成にかかわっていきたい。自分の能力を発揮して、社会に貢献したい」と夢を語っていました。入社してからも、新人研修でも積極的にリーダーシップをとり、班をまとめた様子を話してくれました。「私の班が優勝したんだよ」と研修終了後に、嬉しそうに話してくれました。憧れのクリエイターさんに、書いた案を何度も褒められたことを励みに、「頑張るよ」と希望に満ちていました。

5月になり、インターネット広告の部署に配属されました。「夜中や休日も、仕事のメールが来るから対応しなければいけない」と言っていました。締め切りの前日は、終電近くまで頑張っていましたが、9月頃からたびたび深夜まで残って、仕事をするようになりました。

週明けにあがってきたデータを分析し、報告書を作成し、毎週クライアントに提出する仕事に加え、自宅に持ち帰って論文を徹夜で仕上げたり、企画書を作成したりしていました。

10月に本採用になると、土日出勤、朝5時帰宅という日もあり、「こんなに辛いと思わなかった」「今週10時間しか寝ていない」「会社やめたい」「休職するか退職するか自分で決めるのでお母さんも口出ししないでね」と言っていました。

11月になり、25年前の過労自殺の記事を持ってきて、「こうなりそう」と言いました。私は「死んじゃだめ」と何度も言いました。

その頃、先輩に送ったメールに「死ぬのにちょうどよい歩道橋を探している自分に気がつきます」とありました。SNSにはパワハラやセクハラに、個人の尊厳を傷つけられている様子が度々書かれていました。私には「上司に、異動できるか交渉してみる。できなかったら辞めるね」と言っていましたが、「仕事を減らすのでもう少し頑張れ」ということになったようです。

しかし、12月には、娘をはじめ、部署全員に36協定の特別条項がだされ、深夜労働が続きました。そのうえ、忘年会の準備に土日や深夜までかかりきりになりました。

●「娘が描いた夢も、弾けるような笑顔も、永久に奪われた」

「年末には実家に帰るからね、お母さん、一緒にすごそうね」と言っていたのに、「大好きで、大切な母さん、さようなら、ありがとう、人生も仕事もすべて辛いです。お母さん自分を責めないでね。最高のお母さんだから」とメールを残して亡くなりました。

社員の命を犠牲にして業績を伸ばして、日本の発展をリードする優良企業と言えるでしょうか。有名な社訓には、「取り組んだら離すな、殺されても離すな、目的を達成するまでは」とあります。命より大切な仕事はありません。娘の死はパフォーマンスではありません。フィクションではありません。現実に起こったことなのです。

娘が描いていたたくさんの夢も、娘の弾けるような笑顔も、永久に奪われてしまいました。結婚して、子どもが生まれ、続くはずだった未来は失われてしまいました。私が今、どんなに訴えかけようとしても、大切な娘は二度と生きて戻ってくることはありません。手遅れなのです。

自分の命よりも大切な愛する娘を突然亡くしてしまった悲しみと絶望は、失った者にしかわかりません。だから、同じことが繰り返されるのです。今、この瞬間にも、同じことが起きているかもしれません。娘のように、苦しんでいる人がいるかもしれません。

過労死、過労自殺は、偶然起きるのではありません。いつ起きてもおかしくない状況です。起こるべくして起きているのです。経営者は、社員の命を預かっているのです。大切な人の命を預かっているという責任をもって、本気で改革に取り組んでもらいたいです。

伝統ある企業の方針は、一朝一夕に変えられるものではありません。しかし、残業時間の削減を発令するだけでなく、根本からパワハラを許さない企業風土と業務の改善をしてもらいたいと思います。

残業隠しが再び起こらないように、ワークシェアや36協定の改革、インターバル制度の導入がなされることを望みます。そして、政府には、国民の命を犠牲にした経済成長第一主義ではなく、国民の大切な命を守る日本に変えてくれることを強く望みます。ご清聴ありがとうございました。

(弁護士ドットコムニュース)

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