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「働き方改革」病気治療と労働の両立が課題に…どんな法整備が必要なのか?
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「働き方改革」病気治療と労働の両立が課題に…どんな法整備が必要なのか?

政府の「働き方改革実現会議」の論点の1つに病気治療と労働の両立がある。9月27日に首相官邸で開催された同会議で、安倍晋三首相は、「(会議で取り上げるテーマとして)病気の治療、そして子育て・介護と仕事の両立」をあげている。

この考え方について、朝日新聞(10月10日付)は「どのように両立を図るかの法的な定めはない。職場任せになっている支援をどう強化していくかが課題になっている」と問題点を指摘している。

厚生労働省は今年2月、「治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」をまとめ、がん患者らの退職を防ぐために、どのような支援体制が職場に望まれるのかを紹介している。しかし、受け皿となる職場側には、支援を進める法的根拠がないために進められないとの見方もあるようだ。

病気治療と働き方を両立していくため、どのような法整備が求められるのだろうか。齋藤裕弁護士に話を聞いた。

●どんな対策が求められる?

「現状、病気治療中の社員や、休職あけに復職した社員の働き方について定めた法律はありません。

しかし、厚生労働省の『治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン』では、例えば労働者が入院等により休業を要する場合には、職場復帰プランを作ることが望ましいなどとしています。労働者としては、これを使って、職場にプランの作成と実行を求めることができます。

しかし、使用者から拒否された場合には強制することはできません」

そこで、齋藤弁護士は次のように提案する。

「制度を充実させて、使用者に対し両立支援の必要性を理解させ、両立を後押しする必要があります。

まず、現在でも、産業保健総合支援センター(独立行政法人「労働者健康安全機構」が運営、全国に設置)では、事業者向けに、専門的研修の実施等を行っています。しかし、それだけでは広報として不十分でしょう。自治体が広報や情報提供を行うようにする必要性があります。

また、両立支援に向けた使用者向けの助成金(障害者職場復帰支援助成金)もありますが、両立支援を普及させるためには不十分かと思われます。両立支援をしている事業者が自治体発注契約で有利に扱われるなど、両立支援に取り組む使用者を応援する制度も必要と思われます。

また、厚労省のガイドラインにある両立支援プランを基にして、病気休暇制度や時差出勤、短時間勤務、在宅勤務制度の設置や、従業員それぞれに個別の復帰・両立プログラム作りを必須とするなど、職場で取り組みやすい施策を義務付けることも有効でしょう。

以上のような両立支援促進策を定める法制度を作るべきです」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

齋藤 裕
齋藤 裕(さいとう ゆたか)弁護士 さいとうゆたか法律事務所
刑事、民事、家事を幅広く取り扱う。労災・労働事件、個人情報保護・情報公開に強く、新潟市民病院医師過労死訴訟、トンネルじん肺根絶訴訟、ほくほく線訴訟などを担当。共著に『個人情報トラブル相談ハンドブック』(新日本法規)など。

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