<部活指導に時間を食われる日本の教師は「何でも屋」?>。そんなタイトルの記事がニューズウィーク日本版に掲載された。筆者の舞田敏彦氏(武蔵野大学講師)は、国際調査をもとに、日本の教員の勤務時間の長さを指摘している。
記事で紹介された、2013年の国際教員指導環境調査によると、アンケートに答えた日本教員の1週間の総勤務時間の平均は53.9時間だった。そのうち、部活動に割かれる時間は7.7時間。いずれも調査参加国の中で最も長い。特に部活動に割かれる時間は、参加国平均(2.1時間)と比べて突出して長い。
そもそも、教員が部活動に割く時間は、法的にはどう位置づけられているのだろうか。また、部活動が教員の長時間労働の原因となっている現状をどう見ればいいのだろうか。学校教育の問題に詳しい宮島繁成弁護士に聞いた。
●部活動に割く時間は、法的には「ボランティア」
「部活動は、学習指導要領に記載がありません。正確に言えば、記載はありますが『努力目標』とされているにとどまります」
宮島弁護士はこう指摘する。どういうことだろうか。
「教育課程として位置づけられていないということです。正規の教育活動ではないため、教員が部活動に割く時間は、法的には『ボランティア』ということになります」
そうだとすれば、部活動を正規の教育活動に格上げし、教員の労働時間としてカウントすべきではないだろうか。
「そうとは言い切れません。教育課程による画一化された枠がなく、成績として評価されないからこそ、生徒がいきいきと自由に活動できるという側面があるためです。
それでは、部活動を学校から離して地域やクラブチームに移したほうがいいのではないかという意見もあります。しかし、学校での部活動に大きな教育的効果があることは事実であり、そこまでの社会の合意もありません。
したがって、当面の現実的な策としては、部活指導の対価を充実させるか、指導者の数を増やして一人一人の負担を軽減することが考えられます」
●教員の負担を減らすためには?
具体的には、どんな対策が考えられるだろうか。
「たとえば、大阪の府立高校では、土日休日は4時間以上6時間未満が3000円、それ以上は3700円の手当が出ます。公式戦の場合は、出張扱いとなって代休がとれます。
ただ、授業があるので、そう簡単に代休は取れません。この条件を緩和したり、金額を引き上げることが考えられます」
教員の負担を減らす対策はとられてないのだろうか。
「数の問題については、すでに外部指導員制度が定着しつつあります。教員でない地域住民や保護者、事業者が生徒を指導するものです。
ただ、教育課程とのつながり、単独引率の可否、事故があった場合の責任の所在等について課題が残っています。
このような現状を踏まえて、この8月の中教審の中間まとめでは、『部活動支援員(仮称)』というポストを新たに作る案が示されました。教員免許を持たなくても、部活動の指導や引率ができる職員を制度上、新たに作るようです。
教員をより多く採用して顧問の数を増やすのが本来のあり方でしょう。ただ、当面の対策としては、中教審の方針も一定程度評価してよいのではないかと思います」
宮島弁護士はこのように述べていた。