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「アメリカは番長で、日本は下っ端ヤンキー」弁護士が懸念する「金属バット」のリスク
倉持麟太郎弁護士

「アメリカは番長で、日本は下っ端ヤンキー」弁護士が懸念する「金属バット」のリスク

集団的自衛権の行使容認を盛り込んだ「安保法制」について考えるイベント「アンポホウセイってなに?」が9月10日、東京都内で開かれた。学生グループ「Conect(コネクト)」が主催したもので、政治学者の山口二郎・法政大学教授と倉持麟太郎弁護士が登壇し、ジャーナリストの堀潤さんが司会進行を担当した。学生のほか、社会人など幅広い世代の市民100人以上が参加した。

このなかで、山口教授は、集団的自衛権について「憲法9条の枠組みからはみ出ている」と説明。集団的自衛権の行使を容認した昨年7月の閣議決定については、「『立憲主義』の思想を否定するものだったといわざるをえない」と語った。さらにイギリスの作家、ジョージ・オーウェルの古典的小説『1984年』をあげて、安倍政権の姿勢を批判した。

●オーウェルが指摘した「危険性」とは?

1949年に出版されたジョージ・オーウェルの『1984年』は、近未来の全体主義国家の恐怖を描いたストーリーだ。山口さんは、その中に登場する支配政党の「War is Peace(戦争は平和である)」「Freedom is Slavery(自由は隷属である)」「Ignorance is Strength(無知は力である)」という3つのスローガンを取り上げた。

「これらは、明らかに矛盾しているが、刷り込まれていく。そして、言葉が意味を失って、みんなが矛盾を矛盾と思わなくなる。漠然とした言葉がいつの間にか、真逆の意味で使われるようになる。その危険性をオーウェルは指摘していた」

このように述べたうえで、山口さんは、政府が集団的自衛権の行使を認める安保法制を「平和安全法制」というネーミングにしたことについて、「名前の付け方からしておかしい。まさにオーウェルの具体化だ」と話した。さらに、安倍首相が強調する「積極的平和主義」に触れて、「アメリカ軍の手伝いをして、自衛隊の活動を広げることがなぜ平和主義なのか。もっと掘り下げて考えていかないといけない」と語った。

●「コンプレックスがある奴は、金属バットを持っていっちゃう」

今回の安保法案で大きな問題となっている集団的自衛権とは、密接な関係にある国が攻撃されたとき、一緒に反撃に加わることができる権利のことだ。倉持弁護士は「本当は集団的自衛権というよりも、集団的他衛権と表現したほうがわかりやすい」と言いながら、「アメリカは番長で、日本は下っ端のヤンキーみたいな関係だ」と、ユニークなたとえを口にした。

「下っ端のヤンキーが(番長から)『お前、●●中学に行って、気合いを見せてこいよ』と言われたとする。そのとき、コンプレックスがあるような奴は、金属バットを持っていっちゃう。湾岸戦争のときに感謝されなかったため、日本は『アメリカはここまでやってほしいと思っている』と読み違えている」

倉持弁護士はさらに、「仮に、アメリカがシリアに派兵した場合、日本にも来てほしいと思っているかもしれない。だけど、本当にどこまで『やってほしいと思っているか』は、議論しないといけない」と、集団的自衛権の範囲が拡大する恐れを指摘していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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