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正社員がタイミーでスキマバイトすると「副業」になる? 利用する際の注意点は
画像はイメージです(takeuchi masato / PIXTA)

正社員がタイミーでスキマバイトすると「副業」になる? 利用する際の注意点は

スキマバイトサービス「タイミー」を利用する子持ち正社員男性が増えているーー。そんな現場の実感を吐露するXの投稿が話題になりました。

投稿者の職場では、タイミーに求人を出しています。応募してくる人のうち、中学生以上の子どもがいる正社員の男性が多く、理由は生活費と学費のためだといいます。

近年のインフレによる物価上昇に、賃金の上げ幅が追いついていないという指摘はよく耳にしますが、その穴埋めをスキマバイトで補おうとする人も少なくないのでしょう。

一方で、正社員として働いていると、副業については禁止していたり、申請などの手続きを必要としていたりする企業もあります。タイミーによる仕事は副業にあたるのでしょうか。また、正社員がタイミーで仕事をする場合には注意しておくことはあるのでしょうか。簡単に解説します。

●タイミーでの仕事は「副業」にあたる

タイミーは、企業と働き手をマッチングさせるプラットフォームですが、働き手はマッチングした企業と労働契約(雇用契約)を結び、労務を提供して、対価として報酬を得ます。

このような仕組みによって働く場合、「副業」にあたります。

労働者が勤務時間外の時間をどう使うかは、原則として労働者の自由であり、副業・兼業も原則として自由です。

ただし、企業は、以下のような場合には、就業規則で副業を制限したり禁止したりすることが認められる場合があります。

1)労務提供上の支障がある場合(長時間労働による本業への集中力低下など)
2)業務上の秘密が漏洩する場合
3)競業により自社の利益が害される場合
4)自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

このような事情にあたらないかをチェックするために、副業について届出制となっている会社が多いと思われます。

無申告で副業をして、それが本業に支障をきたすようなケースに発展した場合、就業規則違反として懲戒処分の対象になる可能性があります。

●本業と副業の「労働時間」は通算される

正社員がタイミーなどのスキマバイトをする際に注意が必要なのが、労働時間に関するルールです。

労働基準法第38条1項は、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定めています。

簡単にいえば「複数の違う会社で働いた場合でも、労働時間は通算で計算する」という意味です。

つまり、本業と副業の労働時間を合計して、法定労働時間(原則として1日8時間、週40時間)を超えるかどうかを判断しなければならない、ということです。

●どの会社が割増賃金を支払う義務を負うのか、の検討はややこしい

なお、複数の会社で働いている場合に、どの会社が割増賃金を支払う義務を負うのかはなかなかややこしい問題です。

以下、ごく単純な例に絞って簡単に考え方を説明してみます。

たとえば、本業のA社で6時間働く契約を締結していた人が、副業として後から3時間働く契約をB社で締結した場合を考えてみます。

この契約があって、「契約通り1日9時間働いた」場合、1時間分の割増賃金を支払うのはB社となります。

これは当然に思われるかもしれませんが、次に本業のA社では4時間働く契約を締結していて、後から副業として3時間働く契約をB社で締結した場合を考えてみます。

この契約があって、「契約を超えて、その日はA社で5時間、B社で4時間の合計9時間働いた」場合、法定労働時間を1時間オーバーすることになりますね。

この場合には、 1)A社→B社の順に働いた場合はB社が1時間分の割増賃金を支払う義務がある
2)B社→A社の順に働いた場合はA社が1時間分の割増賃金を支払う義務がある

ことになります。

両者は混乱しやすいですが、考え方としては、以下のようになります。

最初の例では、契約上の労働時間だけで、既に8時間という法定労働時間をオーバーしているわけです。この場合、労働者が8時間を超えて労働しなければならなくなったのは、1日の労働時間をオーバーさせる契約を締結した会社の責任といえます。

分かりやすくいうならば、「A社だけとの契約ならば8時間をオーバーしないで済んだのに、B社とも契約したせいで8時間をオーバーすることになったのだから、オーバーしたのはB社のせいであり、B社が割増賃金を支払うべき」ということです。

したがって、実際働いた順番に関係なく、後で契約を締結した会社(B社)に、割増賃金を支払う義務が生じます。

後の例では、契約上はA社とB社で働く時間を合計しても、8時間という法定労働時間をオーバーしていません。この場合に、その日その労働者が9時間働かざるを得なくなったのは、最後に働かせていた会社が働かせすぎたから、と考えるわけです。

つまり、8時間を超過した労働をさせた「後の会社」が、割増賃金を支払う義務が生じます。

ただし、この労働時間の通算については、実務上、会社側が他社での労働時間を正確に把握することが難しいという課題があります。

画像タイトル 副業時の割増賃金をA社とB社のどっちが支払う?(弁護士ドットコムニュース編集部作成)

●会社側の「労働時間把握義務」と労働者側の「申告義務」

会社は、労働者が働き過ぎて健康を害してしまわないように守る義務を負っており(安全配慮義務)、労働者からの申告などによって他の勤め先での労働時間を適切に把握し、健康状態に問題があれば適切な対応をする義務を負っています。

この義務を会社が果たすため、労働者側も、会社から申告を求められた際は、副業先での労働時間について正直かつ正確に申告することが求められます。

●「申告しない」ことの深刻なリスク

タイミーでの収入が住民税などで会社にバレるのを恐れたり、制限を避けるために、あえて会社に申告せずに働こうとする人も多いようです。しかし、これには様々なリスクがあります。

健康を害するおそれ: 副業を隠すと、会社は労働時間の全体像を把握できません。長時間労働による過労や健康障害が発生しても、会社が時間外労働の抑制などの適切な対応を取れず、労働者自身の健康を害するおそれがあります。

懲戒処分を受ける可能性: 申告を怠り、かつ長時間労働によって本業の業務効率が低下するなど、具体的な支障を会社に及ぼした場合、就業規則違反として懲戒処分(減給、出勤停止、悪質な場合は懲戒解雇など)を受ける可能性があります。

割増賃金が支払われないリスク: 労働者自身が申告を怠ると、副業先(後から契約した勤め先)が本業の労働時間を正確に把握できず、法定労働時間を超えた分の割増賃金が未払いになるリスクがあります。

●税務上の注意点

本業の年末調整とは別に、副業による年間所得が20万円を超える場合には、個人で確定申告をする必要があります。これを怠ると、税務上のペナルティを課される可能性があります。

こうしたリスクを避けるためにも、正社員が副業をする際は、必ず会社のルールに従い、労働時間と健康状態を自己管理することが大切です。

●より詳しく知りたいときは

副業や労働時間の問題は、一般の方には非常に紛らわしく分かりにくいものです。

このような部分についても周知するため、厚生労働省が、副業・兼業についてのまとめサイトを作成しており、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」も公表しています。

また、上の説明は、いずれの会社でも雇用契約を締結していることが前提となっていますが、フリーランスの場合などの説明も掲載されていますので、疑問があれば確認してみるとよいでしょう。

監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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