中居正広さんの女性トラブルをきっかけとして、女性たちが「#私が退職した本当の理由」とハッシュタグ付きで、過去のセクハラ被害をSNSで報告している。
フジテレビの第三者委員会の報告書は、会社が女性より中居さん側の立場に立った側面を指摘。これはひとつの組織の問題ではなく、性被害やセクハラから女性たちが守られない社会の実態が浮かび上がる。
弁護士ドットコムニュースの読者からも「本当の理由」が寄せられた。一部を紹介する。
●「膝の上に乗れ」男性上司の命令を断った報復
まだ数年前のこと。関西地方で病院の清掃バイトを始めた50代女性は「働き始めて間もないころ、スタッフルームで膝の上に座るように、男性上司から言われました」と振り返る。
ハッキリと断れたが、丁寧に仕事を教えていた上司の態度は一変。「その日を境にまったく仕事を教えてもらえなくなり、関わりもせず放置され、3カ月足らずで辞めた」という。
●残業後に上司にホテルに連れ込まれた女性「悪くない私に転勤が命じられた」
関東地方の40代女性は、20代のころに「泣き寝入り」した体験を語った。
「残業が長引き、上司と2人きりになったとき『残業を切り上げてついてこい』と言われ、上司の車に乗せられてラブホへ連れ込まれました。体を触られ制服も無理やり脱がされましたが、相手が諦めるまで必死で抵抗してやめてもらいました」
翌日も恐怖で手が震えるほどのショックを受け、同僚に相談すると、会社も把握するところとなったという。
上司は合意があったと主張。女性は転勤、相手は諭旨解雇の処分となったそうだ。
「営業成績が良かった上司を退職させたということで、私は悪くないのに厄介者扱い。居心地が悪くなり退職しました。その時は、抑うつ状態になっていたため、弁護士に相談するという行動を起こすこともできず、泣き寝入りでした。今思えば、訴えればよかった」
●誰にも相談できなかった
30代の女性は、東京で働いていた25歳のときに、仕事で知り合った経営者から無理やりキスされたつらい出来事を忘れられないでいる。
デザイン業界のイベントで知り合った経営者と食事をした帰りに、オフィスに連れ込まれそうになったという。
「オフィスがあるビルのエレベーター内で無理やりキスをされました。すでに上に登るボタンを押されていたと思います。夜も遅いのでおそらくそのオフィスは無人です。この人は常習犯なんだと思い、なんとか言い訳をして、下に向かうボタンを押して逃げました」
被害を相談しようとしても、転職したばかりの会社は従業員10人以下のベンチャーで人事もおらず、直属の上司もまた被害を相談できるほど信頼できる相手ではなかった。
「謝ってもらうこともできないまま、私は1年も経たずに勤めていた会社を退職しました」
●退職は避けられたが…新人時代は言い出せず
都内在住の30代女性は、今も働き続ける会社で、新入社員のころに上司からセクハラをうけた。
出張先のビジネスホテルで、招き入れられた上司の部屋で、「いきなりベッドに押し倒されキスをされました」と話す。
なんとか押し返して部屋を脱出したが、翌日もレンタカーの中で頭を撫でられるセクハラ被害をうけた。出張が終わると、口止めされたという。
「当時はまだ古い考え方の役員などもたくさんおり、言ってもダメだろう」と考え、会社にすぐ報告できなかった。
そこから数年後に、この上司による別の女性社員への酒席での言動が問題となり、女性に対するキスなどの行為も発覚した。行為を認めた上司は会社を自主退職した。
女性は「もし新人のときに自分からすぐ被害を訴えていたら私が辞めていたかも知れません。辞めなかった理由は、セクハラが発覚した際に重大なこととして会社が受け止めて対処してくれたから」と語る。
「セクハラを受けた場合、被害者の方が辞めてしまうことが多いと思います。私の場合はセクハラが発覚した時には古い考え方の役員が退職されて、まわりの力添えもあり、上司本人の原因でセクハラが発覚したので、運が良かったです」
それでも会社からは当初、上司の処遇について退職ではなく部署異動を提案されたそうだ。
「部署が違くても社員旅行で顔を合わせることがありますし、それでしたら私が辞めますと言いました。本当に気持ち悪く今も思い出して気分が悪くなることがあります」
セクハラによる被害者の不本意な退職をなくすためには、セクハラ被害を深刻な問題とうけとめる会社と周囲の理解が求められる。そうしなければ、フジテレビのように会社が社会的責任を問われる時代だ。