「血液型がB型というだけで、就職活動で不採用になった」。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者は血液型で不採用となったことを送られてきた書面で通知されたそうです。何かの間違いじゃないかと思い電話で確認したところ、応募した会社から「はい、B型が不採用の理由です」と告げられました。
「時間と労力を費やした就活の結果が血液型で決まるのは納得いかない」と憤る相談者は、訴訟で責任を追及することも考えているようです。血液型のみを理由とした不採用は違法なのでしょうか。村松由紀子弁護士に聞きました。
●採用の場で血液型を尋ねること自体「NG」
──特定の血液型を理由とした不採用は法的に問題ないのでしょうか
原則として、どのような者をどのような条件で雇うかは、企業が自由に決定できます。
実際、1970年代初めの判例においては、「特定の思想、信条を有する労働者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない」と述べられていました。
この判例が変更されたわけではありませんが、その後、性別を理由とした募集・採用差別を禁止した男女雇用機会均等法や、障害者に対する差別を禁止した障害者雇用促進法が制定・整備されました。
企業は、募集・採用の段階でも、業務遂行能力等に関係ない事柄で差別しないことが求められるようになっています。
また、職業安定法で「業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集」することが求められていますが、公表されている指針では、人種、民族、社会的身分、思想、信条などは、原則として収集してはならない個人情報とされています。
今回のケースだと、そもそも面接の中で血液型を尋ねるのは、(特殊な業務でない限り)業務目的の達成に必要とはいえません。また、血液型は本人には変えようもないものであり、本人の業務遂行能力とも関係がありません。
以上から、血液型を尋ねそれを理由として採用を拒否するのは、違法であると考えます。
●慰謝料請求は考えられるが…
──血液型を理由に不採用とされた側が法的措置をとろうと思った場合、どのような手段が考えられますか
前述のように血液型を理由として採用を拒否することは違法ですので、慰謝料などの損害賠償請求が可能です。
ただ、「血液型以外の条件を満たしているなら採用しろ」と請求できるかは、別の問題です。
たとえば、すでに採用内定していたのに、企業がその内定を違法に取り消した場合であれば、その取り消しは無効となりますので、企業に就職することも可能です。
しかしながら、企業側と労働契約関係がまったくないところに、裁判所が労働契約を創設することはできませんので、今回のケースのように採用に応募した段階という状況で企業に採用を法的に強制するよう求めることはできないと思われます。