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送別会の最中に倒れて帰らぬ人に…労働者協同組合の女性職員、長時間労働で「労災認定」
会見を開いた遺族の男性(2023年4月24日、弁護士ドットコム撮影、東京都)

送別会の最中に倒れて帰らぬ人に…労働者協同組合の女性職員、長時間労働で「労災認定」

労働者協同組合で働いていた女性(当時51歳)が2018年にくも膜下出血で亡くなったのは、長時間労働などが原因だったとして、八王子労働基準監督署が労災認定した。認定は2023年3月2日付。遺族が4月24日、都内で記者会見を開いて公表した。

遺族側によると、女性が勤務していたのは「ワーカーズコープ・センター事業団」(東京都豊島区)。労働者協同組合は、労働者自らが事業に出資し組合員となり、その意見を反映しながら事業を運営していくもの。2022年10月には、労働者協同組合法が施行された。

女性の夫は会見で「労働者協同組合は、経営が1番になってしまうと、今回の妻のように、労働者の労働環境に関して、ないがしろになってしまうことがあると思います。労働者自身が輝く働き方を実現するのであれば、労務管理をきちんとして安心して働ける職場にしてください」とうったえた。

●送別会の最中に倒れる

遺族側によると、女性は2017年9月以降、三多摩山梨事業本部の事務局長として、「三多摩地区」(西多摩、南多摩・北多摩)と山梨県内に散在する24の事業所(コミュニティーセンターや学童クラブ、児童館など)の管理や運営を担当していた。

女性は毎朝5時半に起床し、7時には自宅を出発。帰宅は連日23時ごろだったが、勤怠管理は9時から17時と形式的に入力されており、残業代の支払いは一切なかったという。

2019年6月には、年に一度開かれる総会の対応に忙殺された。送別会の最中に倒れ、6月29日にくも膜下出血で亡くなった。遺族側の計算では、発症前6カ月間で92〜120時間の時間外労働があったという。

代理人が労基署から受けた説明では、発症前6カ月間で月9〜68時間の時間外労働が認められた。また、休日のない連続勤務が7日を超える勤務が8回、頻繁に出張や移動を伴う業務があったことなども認定された。

●夫は「遺族年金」を受給できず

2021年9月に脳・心臓疾患の労災認定基準が改正され、労働時間に加えて、労働時間以外に負荷がかかる要因も総合的に評価されることになった。

遺族代理人の小野山静弁護士は「今回は労働時間以外の要素が考慮されたからこそ、救済された事案だと思う。ただ、労使で調査して労働時間が合致していたのにもかかわらず、労基署の時間認定が過小であることは問題だ」と指摘した。今後、労働時間など今回の認定の一部に不服があるとして、審査請求をおこなう予定だという。

また、女性が亡くなった当時、遺族である夫は55歳未満だったため、遺族年金を受給できなかった。当初、夫名義で労災申請したところ、労基署に「(夫は55歳未満で障害がないため)遺族年金はもらえないから子どもの名前で出し直しなさい」といったことを言われたという。

受給する人が妻の場合、年齢による制限はないため、男女で差が残っていることが問題となっている。男性は「子どもたちや家に早く帰る私が家事をして、家族で妻を支えてきた部分もあった。それが今の遺族年金だと認められない」とうったえた。

代理人の川人博弁護士は「女性が亡くなった場合に遺族が受け取る労災保険の総額は、男性が亡くなった時に受け取る総額に比べて、はるかに少なくなる。男は職場、女は家庭という古い時代の思想に基づいて作られている法律が、いまだに改正もされず今に至っている」と問題視し、法改正の必要性を訴えた。

●「認定を厳粛に受け止める」

日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会センター事業団は取材に、「あらためて故人のご冥福を深くお祈り申し上げるとともに、ご遺族の皆さまには心よりお悔やみ申し上げます。弊組合は一人ひとりの労働者による組織として、労働者協同組合法の目的を体現できる存在として、今回の認定を厳粛に受け止め、このような事態が二度と起きないよう力を尽くしていく所存です」などとコメントした。

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