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給与制度の改正で「賃金減った」、運送会社の労働者が再び提訴 旧規程に続き裁判沙汰に
大阪地裁(soraneko / PIXTA)

給与制度の改正で「賃金減った」、運送会社の労働者が再び提訴 旧規程に続き裁判沙汰に

運送会社ヒガシトゥエンティワン(大阪市)の運転職労働者6人が2月6日、会社が新しく導入したドライバー向けの賃金規程により賃金が減ったとして、旧規程との差額を求めて大阪地裁に提訴した。労働契約法10条が禁じる同意のない不利益変更にあたり無効だと主張している。

同社の旧規程をめぐっては、今回の原告の大半を含む計29人が、実質的に残業代ゼロになる仕組みで不当だとして裁判を起こし、会社側が請求全額となる計約6200万円を支払うことで2021年に和解している。

法的リスクがあるとして会社が改定した賃金規程の正当性が争われることになり、賃金制度の設計の難しさを示す事例と言えそうだ。

●歩合給廃止、代わりの手当が不足と主張

訴状などによると、同社の旧規程では、残業によって時間外手当や深夜手当などが発生しても、売上に応じた歩合給を上回った分しか支給されないことになっていた。新規程に変更後の2019年に労働者側が提訴し、前述の通り2021年に和解している。

一方、2019年に導入された新規程について、原告側は完全時間給制である点には賛同しつつ、月50時間ほどの残業を前提にした設計になっており、残業時間が少ない人ほど、旧規程時よりも賃金が減ってしまうと指摘。残業を抑止しようとする労働基準法や社会の流れに反するもので、不合理な不利益変更などと主張する。

新旧の差額の算出方法について、原告側は廃止された歩合給と、代わりに新設された手当である「調整給」や「保障給」(毎年25%ずつ減り、4年でゼロになる)などとを比較すべきという。

実際には残業時間の多寡もかかわるため、必ずしも労働者が規程変更で受けた「影響」とは一致しないが、2020年4月〜22年12月現在までに6人で計約2000万円の差額があるとしている。

取材に対し、原告側は「旧規程時の金額とぴったり同じにすることは求めておらず、我々労働組合と話し合って、影響の少ない落としどころを探ってほしかった。残業を積極的に引き受けるなどして生活への影響を抑えている組合員もいる」などとコメント。

対する会社側は、「訴状が届いていないのでコメントは控えたい」と回答した。

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