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慣れない営業で成果出ず、地方転勤断ったら解雇 地裁は無効と判断 弁護士「企業への警告だ」
会見する弁護士ら(2022年11月22日、嶋崎弁護士提供)

慣れない営業で成果出ず、地方転勤断ったら解雇 地裁は無効と判断 弁護士「企業への警告だ」

中小企業向けの特定保険業等をおこなう一般財団法人「あんしん財団」(東京都新宿区)の元職員2人(Aさん、Bさん=いずれも40代女性)が2019年2〜5月に解雇された件を巡り、東京地裁は11月22日、Bさんについて「解雇の権利を濫用した」として無効と判断した。過去の未払い賃金として財団側に約400万円の支払いを命じた。

財団側が2019年9月、2人に対し雇用関係不存在確認を求める訴訟を提起し、反訴した形。原告側代理人の嶋崎量弁護士は「配転を拒否して解雇された事例で、無効というのは珍しい。職場から排除するために地方に飛ばすような事例が他にもある。企業への警告になるのでは」と評価した。一方、Aさんについては解雇は有効とされている。

●あえて地方転勤は「合理性に疑問」

Bさん側は、事務職から営業職に転換した後に「能力不足」と評価され、嫌がらせで遠隔地への配転命令を受けたため断ったところ「就労拒否」とされ、解雇になったと訴えていた。

高瀬保守裁判長は判決理由で、休職明けで関東地方の病院に通っていたBさんにあえて転居を伴う東北や九州への転勤を命ずることは「合理性に疑問がある」と指摘。また、慣れない営業職場でもおおむね誠実に業務をしており、財団側が「配置転換の可能性を考慮しないまま、専らその営業成績を理由に、就業に適さないなどということはできない」と判断した。

判決文などによると、あんしん財団は2000年ごろ、当時の理事長の汚職事件(KSD事件)で経営が悪化。2013年から経営改革の一環として、事務職を営業職に転換するなどしたという。

2人はいずれも転換の対象となり勤務していたものの、全国転勤などを経て、2015年に心理的ストレスなどにより適応障害と診断され、一時、休職している。

Aさんについて地裁は、業務と適応障害の発病の因果関係を否定。解雇直前の4カ月間も欠勤しており、主治医の意見からも「従前の職務を通常程度に行える健康状態に回復する見通しも立っていなかった」とし、就業規則等に照らして解雇する理由はあったと結論づけた。

このほかに、あんしん財団側は労災認定された2人に対しても訴訟を起こすなどしている。広報は「判決文がまだ手元に届いてないため、内容を精査した上で今後の対応を決めていきます」とコメントしている。

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