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東洋大附属中高で「部活顧問任意制」、労働協約を締結 男性教員「本当は授業のために時間を使いたい」
会見で思いを語った30代男性教員(弁護士ドットコム撮影、東京都、2022年11月22日)

東洋大附属中高で「部活顧問任意制」、労働協約を締結 男性教員「本当は授業のために時間を使いたい」

「部活顧問」が学校の先生の多忙化の大きな要因となる中、茨城県の私立学校で「部活顧問への就任を任意」とする画期的な取り決めが締結された。

労働協約(労働組合と使用者との間の労働条件その他に関する書面による取り決め)を締結したのは、東洋大附属牛久中・高校(茨城県牛久市)で働く現役教員(30代男性)。男性と男性が加入する「私学教員ユニオン」(総合サポートユニオン私学教員支部)らが11月22日、会見を開いて発表した。

東洋大広報課によると、適用対象教員は93人。男性は「今回の労働協約の締結は、熱意ある教員の能力を教科指導や学級運営、進路指導に当てられるようになります。そのような方向へ、教員業界全体を変えていきたいです」と話した。

●「自由に顧問を拒否できる内容で画期的」

労働協約の内容は、以下の通り。

(1)学校法人東洋大学は、東洋大学附属牛久中学校・高等学校に所属する教員の部活動顧問への就任を任意とする。また、部活動顧問に就任しない教員に対して不利益な取り扱いを行わない。
(2)学校法人東洋大学は、部活動顧問に就いている教員から部活動の負担軽減の求めがあった場合には、部活動指導員を採用する等、部活動顧問の負担を軽減する。
(3)学校法人東洋大学は、教員募集時に教員の部活動顧問への就任は任意である旨、募集要項に明記する。

私学教員ユニオンの佐藤学さんは「不利益な取り扱いをしないという点も明記し、自由に顧問を拒否できる内容で画期的だ。私学は生徒募集に直結するので、部活動が過熱している。部活顧問を任意にできることは、非常に大きな影響を与える」と評価した。

●主顧問が出てこないのはおかしいという風潮

男性は2016年に常勤講師として採用され、その後専任教員として勤務してきた。2018年から高校の運動部顧問に就任。平日授業後の活動のほか、土曜日は授業後、日曜日は練習試合や大会などがあり、週5〜6日ほど活動していた。男性の週休は平日に1日あったが、顧問をする運動部の体育館の割り当てがあったため、学校に行かざるを得なかったという。

「副顧問をつけてもらったが、主顧問が出てこないのはおかしいという風潮があり、行かなければならなかった。部活顧問は若い教員がやる雰囲気があり、若い人がやっていないと『なぜやっていない』という雰囲気がただよった」(男性)

2018年3月にはスポーツ庁により運動部活動ガイドラインが策定され、1日あたりの活動時間の上限や、週2日の休養日などが定められた。東洋大附属牛久中高でもそれに準じた形のガイドラインができたが、実際には守られていなかったという。

男性は2021年5月に、部活動の負担が主な原因で適応障害と診断され休職した。復職後にあった2022年度の校務分掌の希望届では、A4で11ページの要望書を作り、部活顧問を外してもらった。

男性は「教員はすごく一生懸命で、生徒のために自らを犠牲にしてまで仕事に没頭する人が本当に多い職業。多岐に渡った仕事も全てこなせるスーパーマンのような人はごく一部いますが、大抵の教員は普通の人間であり、普通の労働者だと思います。本当は授業のために時間を使いたいという多くの教員のために、今回の部活顧問任意制は大きな意義があると思っています」と話した。

東洋大学広報課は取材に「この取り組みが教員の働きやすい労働環境に繋がることを願っております」とコメントした。

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