中日臨海バスでバス運転手をしていた男性(当時53歳)が自殺したのは、長時間労働とパワハラが原因だとして、遺族が国に労災不支給決定の取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁(伊藤由紀子裁判長)は11月25日、原告側の請求を棄却した。原告側は控訴する方針。
妻は判決後に都内で記者会見し、「思ったような評価がされていないことにショックでした」と話した。
会見に参加した妻
●「業務により心理的負荷があったとはいえない」
判決などによると、男性は2010年5月から中日臨海バス(三重県四日市市)の川崎営業所でバス運転手として働き始めた。2014年9月下旬にうつ状態と診断され、2014年10月に自殺した。
妻は労災申請したが、川崎南労基署は2015年に「業務に起因するものではない」と不支給を決めた。その後、東京労働局と労働保険審査会に不服申し立てをしたが、いずれも棄却された。
伊藤裁判長は判決理由で、発症前6カ月の間の不規則・勤務間インターバルの短い勤務を含んだ連続勤務の心理的負荷を「中」、2014年9月に起こした物損事故で管理職から暴言や侮辱を受ける可能性があったことについて心理的負荷を「弱」と判断したが、「業務により心理的負荷があったとはいえない」と結論づけた。
また、返済困難な借金があったことや母が病気で入院するなど、業務以外の出来事による心理的負荷について「相当程度あり、これらが原因でうつ病を発症した可能性も否定できない」として、業務起因性を認めなかった。
代理人の川人博弁護士は「判決文は現在ある厚生労働省の労災認定基準のみに依拠している。裁判所は厚生労働省の労災認定基準に問題があった場合には、その不備を正さなければいけない。全くもって情けなく、残念な判断である」と問題視した。