鉄道事業者のよる顔認証システムの利用は直ちに中止されるべき――。このような意見書(https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2021/211125.html)を日弁連が11月25日に公表した。
今年9月、JR東日本が駅構内などの歩行者らと、刑務所からの出所者らとの顔情報を照合し、検知するシステムを運用していることが読売新聞などに報じられた。
その後、出所者についての照合は中止になったものの、指名手配中の被疑者とうろつくなどの不審な行動をとった人物の検知は続いているという。
日弁連は、民間による捜査協力とは言え、事実上、警察が裁判所の令状などもなしに「顔認証システム」を動かしているのに等しいとして、「強制処分法定主義(刑事訴訟法第197条第1項ただし書)を潜脱するもの」と批判。また、不審な人物の検知についても、恣意的な運用がおこなわれるおそれがあると指摘する。
公共の場所における不特定多数の者を対象とする同種の仕組みについては、EUでは原則禁止、アメリカでは州法等による法規制が進んでいるという。
意見書は、日本でも法的ルールをつくるべきと指摘。一方で仮に立法されても、移動の代替手段を得ることが容易ではない公共交通機関については、事実上の強制として機能し、プライバシー権を著しく損なうとして、「鉄道事業者による顔認証システムの利用は直ちに中止されるべき」としている。