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2020年08月02日 09時59分

社長からセクハラ、断っても「幸せにしたい」「訴えないでね」 退職を決意した女性、失業手当はどうなる?

社長からセクハラ、断っても「幸せにしたい」「訴えないでね」 退職を決意した女性、失業手当はどうなる?
画像はイメージです(IYO / PIXTA)

社長からのセクハラが止まず、退職を考えている女性が、その方法について弁護士ドットコムに質問を寄せました。

セクハラ加害者は、女性の勤務先の社長です。女性によれば「断っても執拗に食事に誘われる」「前髪を触られたり、触ろうとしてくる」「告白したいから食事に行こうと言われた」「セクハラで訴えないでねと念を押される」などの被害にあっているそうです。

メモ、トークアプリのスクショ、「いい子だから幸せにしたいなって思った」などの録音データも証拠として持っています。

「どうしても気持ち悪いので退職を考えている」という女性。このような場合、女性の退職理由は「自己都合」となってしまうのでしょうか。櫻町直樹弁護士に聞きました。

●退職理由はどうなる?

ーー今回のようなケースでも、自分から退職を望めば、自己都合になるのでしょうか

質問にお答えする前に、「失業手当」の仕組みについて解説します。というのも、会社を退職したときに頼りになる失業手当ですが、これは退職理由に関係してくるからです。

失業手当は、「雇用保険法」(以下「法」といいます)に基づいて支給されるもので、法律上は「求職者給付」(法10条)と呼ばれています。

なお、雇用保険法に基づく給付には、求職者給付のほかにも、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付があり、総称して「失業等給付」といいます。

ーーもらうためには、どのような要件が必要ですか

失業手当の給付を受けるには、一定の受給資格要件を満たす必要がありますが、退職の理由が何であるかによって、受給資格(の種類)が変わってきます。

具体的には、勤務先の倒産や、解雇・退職勧奨などによって退職した場合には「特定受給資格者」(法23条2項)となります。

また、有期雇用契約が更新されず退職した場合や「正当な理由のある自己都合」によって退職した場合には「特定理由離職者」(法13条3項)となります。

ーーよく「会社都合」という表現が使われますが、これは法的にはどのような位置付けにありますか

日常的な用法でいう「会社都合退職」は、自己都合退職よりも、失業手当の受給において有利になるという意味では、上記の特定受給資格者・特定理由離職者にあたる場合、と考えればよいでしょう。

退職した労働者が、特定受給資格者や特定理由離職者に該当するときは、そうではない場合と比較して次のような利点があります。

・被保険者期間が離職前1年間に通算6カ月で足りる(通常は離職前2年間に通算12か月)
・給付制限期間(3カ月)の適用がない
・失業手当の支給期間が長くなる場合がある

このように、特定受給資格者・特定理由離職者に該当しない退職者よりも、手厚い保護が受けられるようになっています。

ーー退職する人にとっては、理由が非常に重要となってくるのですね

そうです。今回のように、社長からセクシュアル・ハラスメントの被害に遭っているという場合について考えます。

厚生労働省が公表している『特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準』(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000147318.pdf)では、「特定受給資格者の判断基準」の「Ⅱ  解雇等により離職した者 」において、「(9)上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者 」が挙げられています。

この中で、上司等から「嫌がらせを受けたこと」について、具体的には、次のように説明されています。

「(2)事業主が男女雇用機会均等法第 11 条に規定する職場におけるセクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」という。)の事実を把握していながら、雇用管理上の措置を講じなかった場合に離職した場合が該当します。」

「事業主が直接の当事者であり離職した場合や対価型セクハラに該当するような配置転換、降格、減給等の事実があり離職した場合も該当します。 」

ーー今回のケースではどう判断されますか

今回のケースでは、社長がセクハラの当事者であり、労働者が社長の行為に対して拒否・拒絶の意思を示しているにもかかわらずセクハラにあたる行動を改めていません。

その結果、セクハラに遭った労働者が退職を余儀なくされたという状況であれば、いわゆる会社都合退職である「特定受給資格者」に該当するといえるでしょう。

取材協力弁護士

櫻町 直樹弁護士
石川県金沢市出身。企業法務から一般民事事件まで幅広い分野・領域の事件を手がける。力を入れている分野は、ネット上の紛争解決(誹謗中傷、プライバシーを侵害する記事の削除、投稿者の特定)。

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