新型コロナウイルス問題で、今年のボーナスはかなり厳しいことになりそうだ。
たとえば、大手を見ても、航空会社のANAやJALは夏季賞与がおよそ半分になる見込み。旅行会社のJTBは、早々に冬のボーナスを支給しないと発表した。
ボーナスをめぐっては、「コロナの最前線」で奮闘した医療従事者ですら、前年比減やゼロという病院などがあることで同情が寄せられている。
ボーナスは経営業績に左右されるものだとはいえ、会社の一存で払う・払わないが決められるものなのだろうか。ボーナスの法的位置づけについて、今泉義竜弁護士に聞いた。
●法律での争いには限界も
ボーナスは必ずもらえるものではない。ただし、例外もあるという。
「就業規則や労使間の労働協約などに明示された規定があれば、ボーナスを受け取る法的な根拠があることになります」
ただし、具体的な金額が書かれていることはほとんどなく、会社の裁量が大きくとられていることが通常だろう。
このほか、労使慣行で何年も継続して支給されているような場合は、ボーナスをもらう『期待権』があるとして争う余地もあるという。
「ただ、法律には限界があります。ボーナスはむしろ、労使の力関係で決まる面がある。労働者がいかに団結するかが重要です」
●低下する組織率、改めてわかった重要性
具体的には労働組合の出番ということだ。個では難しくても、団体になることで法的に保障された交渉力を持つことができる。
たとえば、東京女子医科大学では、労働組合がコロナ減収を理由にした「一時金ゼロ」方針の撤回を求め、大きな反響を呼んだ。
この結果、大学当局も一時金支給の方針へと転換せざるをえなくなった。経営者としても、労働者に辞められたり、働いてもらえなかったりすれば困ったことになる。
「もちろん、病院なども経営が厳しいのは間違いないでしょう。コロナ禍においては、世論への訴えかけなども通して、政治に対して補償を求めていくことも組合の役割だと思います」
だが、労働組合の推定組織率は16.7%(2019年6月30日現在/厚労省『2019年労働組合基礎調査の概況』)。減少傾向に歯止めがかかっていない。
「労働組合は今からでもつくれるし、外部のユニオンに加入しても良い。コロナを理由とした不当解雇も増えており、労働組合の必要性は高まっています」
●もらって当たり前の「ボーナス」で良いのか?
そもそも、ボーナスは本来の意味を離れて、事実上の「生活給」になっているところも多い。生活に直結するような大金なのに、不安定な状況のままにしておいて良いのだろうか。
「今は月例給を抑えてボーナスで調整するという傾向があるように感じます。しかし、本来的にはベースとなる月例給与をきちんと保障していくべきでしょう。
賃金の中で変動するボーナスの比重を高めるような経営側の動きを食い止め、ベースアップを求めていくということが、労働組合の重要な役割だと思います」
こうした交渉にも労働組合の存在が重要になる。危機に備え、労働者側もコロナの経験を踏まえた対応を考えていくべきなのかもしれない。