新型コロナウイルスの感染拡大で、在宅勤務が広がっていますが、苦労するのは作業場所の確保です。
ツイッターでは、「リモート会議中にドリンクこぼした人の画面が乱れた」「PCに醤油をこぼした」「早速パソコンにコーヒーこぼした」など、パソコンに何かをこぼしてしまったという声がありました。
また、2歳の子どもがいる30代男性は、「子どもがノートPCに興味津々なので、仕事をしていると、キーボードを触ってきたりPCを閉じたりなどの妨害を全力でして来るんです」と嘆きます。子どもがうっかり会社貸与のものにいたずらしないか、目が離せないという人も多そうです。
在宅勤務中のちょっとした不注意で、PCなど会社の備品を壊した場合、従業員が賠償する義務はあるのでしょうか。今井俊裕弁護士に聞きました。
●簡単に「賠償義務を負う」とはならない
ーー在宅勤務が広がり、ヒヤッとした経験がある人も多そうです。賠償義務については、どう考えられますか
在宅勤務中に、会社から貸与を受けて自宅で利用していたパソコンなどを故障させてしまったからといって、それでただちに従業員が賠償義務を負うかと問われれば、そう簡単に負う義務が生じるとは思えません。
ーーなぜなのでしょうか
まず、在宅勤務ではなく、通常どおり会社のオフィスでパソコンを利用して業務している最中であっても、そう簡単に従業員が賠償義務を負うという結論にはなりません。
従業員は会社の業務遂行の一環として機器を利用しているのであり、会社も従業員が指示した業務を遂行させるために会社の備品を利用させています。
例えば従業員が故意に壊したとか、あるいはそれに準じるような重大な過失が認められなければ、通常は賠償義務を認めることは困難です。
また、仮に、裁判所が賠償義務を認める場合でも、被害額全額ではなく、その一部の金額であることが多いです。
●在宅勤務「会社が引き受けるリスクは広くなる」
ーー在宅勤務の場合は、どう考えられますか
会社からの指示による在宅勤務となると、さらに会社が甘んじて引き受ける負担やリスクの範囲は、狭くなるというよりも、むしろ広くなると考えるのが妥当でしょう。
当然、自宅内であることから、周囲に上司や同僚もいません。そのような環境ならば、リラックスしたり、ついついコーヒーを飲んだり、昼食の休憩時間以外に飲食したりする機会は、オフィスよりも多いはずです。
それは自宅勤務を命じた会社としても容易に予見できることであるし、それをある程度は了承した上での指示であるとも言えます。
とすれば、例えば、在宅勤務中に従業員が飲料をこぼしたなどの理由で貸与を受けていた機器を故障させてしまった場合は、オフィスで業務中に壊した場合よりもさらに従業員が免責される範囲は広いでしょう。