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職場の同期や同じ役職階級者など横の関係で起きる「職場いじめ」にはどう対応すべきか

職場の同期や同じ役職階級者など横の関係で起きる「職場いじめ」にはどう対応すべきか

近日、学校で発生した子ども同士のいじめがメディアを通じて大きく取り上げられ、問題視されているが、実はいじめは大人の世界である職場でも起こり得る。

全国の労働局などに寄せられた職場での「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は、2011年には45,939件と10年前の7倍にも達し、先日には元TBSアナウンサーで、現在はフリーアナウンサーとして活躍している小林麻耶さんも、過去の職場でのいじめ体験を告白し話題となった。

職場でのいじめとしてパワーハラスメントの概念が広く知られるようになったが、厚生労働省によるパワーハラスメントの定義は、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」とされており、これには上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれる。

しかし、上記のパワーハラスメントの定義にある「優位性」のない社員同士の関係であっても、性格や態度が気に入らないといった理由でいじめが起きているケースもあるようで、家族や生活を守るため誰にも相談できずに耐えながら働いている人や、いじめが原因で退職を余儀なくされた人もいるようだ。

それでは、このような職場いじめにはどのように対応すべきなのか、岡田晃朝弁護士に聞いた。

●会社には職場環境に配慮する義務がある

「会社などの使用者は、社員などの被用者との関係において社会通念上伴う義務として、被用者が労務に服する過程で生命及び健康を害しないよう、職場環境等につき配慮すべき注意義務を負い、更に労務遂行に関して被用者の人格尊厳を侵しその労務提供に重大な支障を来たす事由が発生することを防ぎ、またはこれに適切に対処して職場が被用者にとって働きやすい環境を保つよう配慮する義務があるとされています。」

「下級審で、主に会社内でのセクハラ裁判において発展してきた考え方ですが、セクハラ以外のハラスメントについても、会社はそれを防止し環境に配慮する義務があるという考えに繋がりうるものでしょう。」

●職場環境が改善されない場合も、すぐには退職せずに弁護士に相談を

「職場いじめの被害を受け、会社が職場環境の改善を行なわない場合には、出来る限り退職する前に、休職などで対応しながら弁護士に相談すべきです。仮に、退職する場合でも、会社側の出した書面にみだりにサインしたりするべきでないでしょう。」

●もし退職する場合は証拠の確保を

「なお、会社を相手に裁判を起こす場合は、その後も会社に残ることは法律上は可能ですが、事実上は難しいです。もし会社が職場環境の改善を行なわず、職場いじめが続くようならば、退職まで見据えて行動された方が良いでしょう。この手の紛争では、具体的な証拠の確保が困難であることが多いので、退職前に問題となるハラスメントが発生していたことはもちろん、会社がそれを知りえたことなどの証拠の確保に努めましょう。」

岡田弁護士の解説のとおり、会社には職場環境について配慮する義務があるので、もし優位性のない社員同士による職場いじめの被害者となった場合は、まずは上司などに相談しよう。

また、それでも職場環境が改善されない場合においても、よほどの事情がない限り、すぐには退職せずに休職などで対応しながら、弁護士に相談して自分が不利にならないよう対応策を検討してから行動した方が良さそうだ。

やむを得ず退職する場合には、会社側の出した書面にみだりにサインはせず、退職前にいじめの事実や会社がそれを知りえたことを証明するための証拠を確保しておきたい。何が証拠となるかは状況によって異なるが、もし上司などに職場環境の改善を求めたメールを送っている場合には、退職前にデータを保存しておくことをお奨めする。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

岡田 晃朝
岡田 晃朝(おかだ あきとも)弁護士 あさがお法律事務所
あさがお法律事務所 訴訟業務はもちろん、それ以外にも大学院での講義や企業講演、取材対応などを幅広く業務を行なっている。兵庫県弁護士会所属。趣味はギター、料理。

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