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退職時に消化しきれない「有給休暇」の買い取りを会社に請求したい! 可能なの?
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退職時に消化しきれない「有給休暇」の買い取りを会社に請求したい! 可能なの?

有給休暇の買い取りを会社に請求したいー。転職する時にそう思ったことはありませんか。次の会社で働く都合などで、全部有給休暇を消化できないこともあるからです。ネットのQ&Aサイトでも、この問題についての悩みが相談が投稿されていました。

相談者は4月30日に退職することが決まっているが、3月31日時点で20日ほどの有給休暇が残っていて、4月1日に新たに20日付与されるそうです。合計40日の有給休暇がありますが、4月中に全部使いきれないため、買い取りを請求できるかどうか、気になっているそうです。

退職時に有給休暇を買い取らせることは可能なのでしょうか。会社が拒否した場合は諦めるしかないのでしょうか。黒栁武史弁護士に聞きました。

●買い取りが可能であることと、請求する権利が認められるかは別問題

そもそも、年次有給休暇(以下「年休」といいます。)の買い取りは、原則として、年休の保障を定める労働基準法39条の趣旨に反するものです。

ただ、労働者の退職や解雇に伴い、未消化のまま年休が消滅する場合には、会社が労働者の意思に基づき年休の買い取りを行っても、問題はないと解されています。

今回のケースは、労働者の退職に伴い消滅する年休の買い取りの場面に当たりますので、買い取り自体は許容されます。しかし、買い取りが可能であるということと、買い取りを請求する権利が認められるかは、別問題です。

●就業規則で認められていれば、買い取り請求も可能

年休の買い取りは、会社と労働者との間の合意による必要があり、労働者から会社に買い取りを請求することまでは認められないのが原則です。ただし、会社の就業規則等で、退職時等に消滅する年休の買い取り請求が、労働者の権利として認められている場合には、買い取り請求も可能になりえます。

今回のケースも、会社の就業規則等で定めがあれば買い取り請求が認められ得ることになりますが、なければ認められないことになります。

買い取り請求が認められない場合には、年休を全て消化できる時期に退職時期を合わせたり、あるいは退職についての会社の要望(退職時期や引継ぎなど)に応えつつ年休の買い取り交渉を行うなど、事前に対応を考える必要があるといえます。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

黒柳 武史
黒柳 武史(くろやなぎ たけし)弁護士 賢誠総合法律事務所
京都府出身。2007年大阪弁護士会で弁護士登録。2020年京都弁護士会に登録換え。取り扱い分野は、労働事件を中心に、建築・不動産に関する事件や、一般民事・家事事件など。

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