SNSや動画サイトでは、夫婦の不倫を暴露するコンテンツが人気を集めています。
そうした中、妻が不倫相手の子どもを夫の子どもと偽る、いわゆる「托卵」の動画を見続けていた夫から、突然「子どもが本当に自分の子なのか」と疑われ、DNA鑑定まで求められた――。
そんな妻の投稿がSNSで注目を集めました。
女性によると、夫は「血がつながっていない子どもを育てるのは絶対に無理」などとして、DNA鑑定を要求。女性が疑われたことに腹を立てると、「やましいことがあるから、キレる」「不倫してる女と同じことを言っている」などと言われたといいます。
その後、実際に鑑定したところ、結果は当然のことながら「夫の子」だったといいます。
身に覚えがないにもかかわらず、配偶者から繰り返し不倫や「托卵」を疑われ、DNA鑑定まで求められる――。こうした言動は、いわゆる「モラハラ」にあたる可能性があるのでしょうか。
また、それによって夫婦関係が壊れて離婚に至った場合、慰謝料を請求することはできるのでしょうか。男女の問題にくわしい古関俊祐弁護士が解説します。
●DNA鑑定求める行為はモラハラ?
──夫が妻に対して不倫を繰り返し疑い、DNA鑑定を求める行為は、法的に「モラハラ」や精神的DVと評価される可能性がありますか。
モラハラと精神的DVのどちらになるかは判断が難しいところがありますが、一般的にモラハラは言葉や態度によって相手の人格や尊厳を傷つけることを指し、精神的DVはさらに進んで暴言や暴力によって相手の精神面を傷つけることを指すとされます。
今回のように、何度もしつこく托卵を疑うような言動をすることは相手の人格や尊厳を傷つけることになる点でモラハラや精神的DVになるといえるでしょう。
●「托卵」疑いきっかけで離婚?
──こうした言動が繰り返された結果、妻が離婚を決意した場合、「婚姻を継続し難い重大な事由」として法的に離婚が認められたり、夫に慰謝料を請求したりすることはできますか。
民法770条では、裁判で離婚が認められる理由の一つとして、「婚姻を継続し難い重大な事由」がある場合を定めています。
これは、夫婦関係が修復困難なほど破綻し、婚姻生活を続けることが難しい状態にあることを意味します。その判断にあたっては、一つの言動だけではなく、夫婦間でどのような言動が繰り返されてきたのか、別居の有無や期間、夫婦関係の状況など、さまざまな事情が考慮されます。
そのため、今回のように夫が「托卵」を疑ったという言動だけをもって、直ちに「婚姻を継続し難い重大な事由」があると判断される可能性は高くないでしょう。今回の托卵を疑ってくる言動のみで婚姻関係が破綻したため「婚姻を継続し難い重大な事由」があると判断することは難しいでしょう。
ただ、このような言動をしてくる時点で、それ以外にもモラハラ・精神的DVにあたる言動を受けていたり、夫婦としての信頼関係が損なわれているようなエピソードを挙げることはできると思います。
そういった色々な事情を組み合わせて主張することで、離婚を認めさせたり、慰謝料を請求するということが可能になってきます。
●妻の不倫や托卵疑ってしまったら…
──SNSや不倫暴露系の動画などを見ているうちに、「もしかしたら自分も妻に裏切られているのでは」「子どもは本当に自分の子なのか」と不安になってしまう人もいるかもしれません。根拠のない疑いによって夫婦関係を壊さないために、妻を疑ってしまった夫はどのように気持ちを整理し、妻と向き合えばよいでしょうか。
SNSやテレビドラマなどで話題になっているテーマではありますが、客観的にみて托卵を疑うことが妻の人格や名誉を傷つける大変失礼なことであることは理解するべきです。
その上で、まずお子さんときちんと向き合いながら、本当に自分の子どもではないと言える客観的な根拠があるのかを検討してみましょう。
DNA鑑定自体は、さほど手間をかけずに行うことができるくらい身近なものにはなっています。ただ、自分がすっきりしたいという欲求だけで、妻や子どもを傷つけることにならないか、よくよく考えてDNA鑑定という言葉を使うようにしましょう。