医師の男性に独身だと偽られて交際し、妊娠・出産に至ったなどとして、都内在住の経営者の30代女性が男性に対し、計2200万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
提訴は9月30日付。女性とその代理人が11月6日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開き、明らかにした。
原告側は、男性が既婚者であることを隠して交際を始め、その後も離婚すると繰り返しながら関係を続けたと主張している。妊娠中には、抗不安薬を無理やり飲まされたともうったえている。
また、男性側の代理人弁護士についても、交渉中の言動が不適切だったとして、弁護士会に懲戒請求したとしている。
●「本当に独身だよね、と確認した」
訴状によると、2人は2022年夏に知り合った。男性は交際前から独身だと公言していたという。
男性から肉体関係を求められた際、女性は「不倫はしたくないから本当に独身だよね」と確認し、男性は「結婚していない」と答えたという。
2023年春ごろ、2人は結婚を前提に交際をスタートし、同年10月ごろに女性の妊娠が判明した。
ところが、男性はこのとき初めて、妻子のいる既婚者であることを告白したという。
女性はショックを受け、食事も仕事もできない状態に陥り、適応障害(うつ状態)と診断されたとしている。
記者会見する原告の女性(2026年11月6日、東京・霞が関の司法記者クラブで、弁護士ドットコムニュース撮影)
●抗不安薬を飲むよう「指示」されて流産
原告側の主張によると、男性は2023年11月ごろから、医師の立場を利用して入手した抗不安薬を女性に渡し、継続的に服用するよう指示したという。
女性はその後、流産した。ただし、薬の服用と流産との因果関係は明らかになっていない。
女性は関係を解消しようと、弁護士を通じて男性に合意書案を送った。しかし、男性が「別れたくない」と伝えたため、合意書の締結には至らなかった。
その後も男性は、妻と離婚して女性と結婚すると繰り返し、マンションの購入や結婚指輪の用意などの条件を示したという。
生まれた赤ちゃんと一緒に写真に収まる原告の女性と男性医師(原告提供。一部にモザイク加工をしています)
●「正式に離婚が決まった」告げられ同居、しかし…
2024年1月ごろ、男性から「今の妻と正式に離婚が決まった」と告げられ、2人は同居を始めた。
しかし、原告側は、実際には離婚の手続きが一切進んでいなかったと主張している。
女性は2024年2月ごろに再び妊娠した。ところが4月ごろ、男性は「やっぱり胎児を堕ろしてほしい」と求め、同居していた家を出て行ったという。
その後、男性は「とりあえず子どもを産んでから、どうするか決めよう」などと伝え、女性はその言葉を信じて同居を再開した。
原告の女性と被告の男性医師がやり取りしていたLINE(原告提供。一部にモザイク加工をしています)
●妊娠中、抗不安薬を「口内に無理やり押し込まれた」
訴状によると、女性は胎児への影響を心配して抗不安薬の服用を拒んでいたが、2024年8月、男性から自宅で同3錠を口の中に無理やり押し込まれ、うち1錠を飲まされたという。
女性はこの件について警視庁に被害届と告訴状を提出し、2026年9月に暴行罪の被害届が受理されたとしている。
女性は2024年10月に男児を出産。しかし、男性はその後、妻のもとへ戻ったという。原告側は、男性が女性と子どもとの同居や養育を一方的に放棄したと主張している。
また、男性が独身と偽って交際した行為は、貞操権の侵害にあたるとうったえている。
被告の男性医師は生まれた赤ちゃんの沐浴をしたという(原告提供。一部にモザイク加工をしています)
●女性「彼を一生許すことはない」
原告の女性は11月6日の記者会見で、「彼を一生許すことはない」と語った。
女性は、ニュースやSNSなどを通じて、いわゆる「独身偽装」の被害者が多くいることを知り、「私もこのまま泣き寝入りしてはいけないと思うようになった」と提訴を決断した理由を説明した。
そのうえで「被害者がこれ以上増えてほしくない。一人で苦しむのではなく、救済があると知っていただきたい。独身偽装という問題が、一人でも多くの人に知られることを心から願っています」と話した。
●被告の男性医師に取材申し込み、回答得られ次第追記
弁護士ドットコムニュースは被告の男性にも取材を申し込んでおり、回答を得られ次第、追記する。