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夫のスマホに「女性と寄り添う」写真、しかも2人とも「キスマーク」つけて…これだけでも不倫の証拠よね?
d-daystudio / PIXTA

夫のスマホに「女性と寄り添う」写真、しかも2人とも「キスマーク」つけて…これだけでも不倫の証拠よね?

夫の不倫を疑っていた妻が携帯電話を勝手に開いてみると、女性と寄り添う夫の動画が見つかりました。撮影されたのは、相手の女性の自宅のようです。しかも、2人の首にはこれ見よがしに「キスマーク」が浮かんでいます。

妻から問い詰められた夫は、これをキスマークだと認めながらも「肉体関係はない」と否定しました。

「キスマークだけでも不貞行為(肉体関係)の証拠にならないのか」 「これが原因で離婚したら、慰謝料請求はできるのか」

憤る妻からのメッセージが弁護士ドットコムの法律相談に寄せられています。男女問題にくわしい長瀬佑志弁護士に聞きました。

●2人で熱いキスマーク…場合によっては不貞?

——キスマークを互いに付け合うのは、不貞行為の証拠として有効でしょうか

キスマークを付け合う行為のみでは、不貞行為(肉体関係)があったという直接証拠にはなりません。もっとも、このような行為があった場所や時間帯、頻度などの事情によっては、不貞行為を推認させる間接証拠となる場合はあります。

今回のケースの動画は、交際相手の女性宅で撮影されたようですから、少なくとも夫が女性宅に出入りしたうえで、お互いにキスマークを付け合っていることがうかがわれます。他には、動画が撮影された時間帯や、そのようなデータから示される夫の滞在時間によっては、夫と女性との不貞行為があったことを推認させる有力な間接証拠となりえます。

——女性宅でキスマークを付け合っていた行為は離婚事由になりますか

法定の離婚原因は、民法770条に規定されています。民法770条1項1号が規定する「配偶者に不貞な行為があったとき」とは、「配偶者ある者が自由な意思にもとづいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいう」とされています(最高裁昭和48年11月15日判決)。

キスマークを付け合う行為は、「性的関係を結ぶこと」には当たらないため、「不貞」(民法770条1項1号)を理由とする離婚請求は難しいと考えられます。

ただし、法定離婚原因には「婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法770条1項5号)も規定されており、これは夫婦の婚姻関係が破綻し回復の見込みがないことをいいます。

交際相手の自宅でキスマークを付け合う行為のように、性的関係を結んだとはいえないものの、他の異性と親密な関係にあることで婚姻関係が破綻した場合には、「婚姻を継続し難い重大な理由」にあたりえます。

●慰謝料請求が認められる可能性も

——それでは、妻は相手女性に慰謝料を請求できるのでしょうか

前述のとおり、キスマークを付け合う行為は、法定離婚原因である「不貞」にはあたりません。

もっとも、婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害することは、不法行為に該当するとされます(最高裁平成8年3月26日判決参照)。

このような観点から、慰謝料請求としての「不貞」を肉体関係に限定する必要はなく、類型的に婚姻共同生活の平和を侵害する蓋然性のある行為かどうかを基準とすべきであると解されます(判例タイムズ1278号45頁「不貞慰謝料請求事件に関する実務上の諸問題」)。

具体的には、性的交渉または性交類似行為、同棲、通常人を基準として、婚姻を破綻に至らせる蓋然性のある異性との交流・接触も「不貞」に当たると考えられています。

なお、上記の判例タイムズでは、2人で食事や遊びに行く程度の交際であっても、相手の配偶者に見せつけるような対応でおこなわれている場合には「不貞」に該当する場合がありうると指摘されています。

今回のケースにおいても、状況によっては交際相手宅でキスマークを付け合っていた行為が「不貞」に該当するとして、相手女性への慰謝料請求が認められる可能性があります。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

長瀬 佑志
長瀬 佑志(ながせ ゆうし)弁護士 弁護士法人長瀬総合法律事務所
弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。多数の企業の顧問に就任し、会社法関係、法人設立、労働問題、債権回収等、企業法務案件を担当するほか、交通事故、離婚問題等の個人法務を扱っている。著書『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践している ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)、『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)ほか

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