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姑のせいで「咳止め薬」依存になった妻、「月10万円」の出費で夫は我慢の限界に
写真はイメージです(プラナ / PIXTA)

姑のせいで「咳止め薬」依存になった妻、「月10万円」の出費で夫は我慢の限界に

「妻が市販の咳止め薬の依存症になり、月10万円以上の出費があります。離婚することはできますか」。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられています。

相談者の妻は専業主婦。夫婦には1歳になる娘もいます。しかし、妻は咳止め薬がないと育児も家事もできない状態になってしまいました。

妻が咳止め薬をやめられなくなったきっかけは、相談者の母から精神的苦痛を受けたこと、そして、それに対して相談者が何もフォローしなかったことが要因だそうです。そのため、相談者は自分自身にも「非がある」と思い、妻を支えてきました。

とはいえ、月にかかる出費は10万円以上。借金も増え続けており、相談者は妻との生活に疲弊し、離婚を考えるようになりました。

薬物依存症は治療や支援などにつながることで「回復できる」病気だといわれています。病院や支援団体などにつながることで、妻が回復できる可能性はあるでしょう。また、家族の相談に応じる機関もあります。

ただ、家族である夫にも大きな負担がかかります。妻と離婚すると決めた場合、夫の主張は認められるのでしょうか。山口政貴弁護士の解説をお届けします。

●裁判で争う場合は、法律上の離婚原因が必要

ーー妻が離婚に応じてくれない場合は、どのように対応すればよいのでしょうか。

話し合いがまとまらない場合には、調停及び裁判で離婚を争うことになります。法律上は、次の5つが離婚原因として定められています。

(1)不貞行為(いわゆる浮気)
(2)悪意の遺棄
(3)3年以上の生死不明
(4)強度の精神病
(5)婚姻を継続し難い重大な事由

今回のケースでは(1)~(4)は関係ありませんので、咳止め薬で月10万円以上使うことが「婚姻を継続し難い重大な事由」といえるかどうかが問題となります。

●高額な買い物やギャンブルと同一視はできない

ーー妻が咳止め薬のために月10万円以上使うことは「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるのでしょうか。

これがブランド品や高額な洋服の買い物であったり、ギャンブルで使ったりしており、話し合いをしても解決にいたらず、夫婦関係が破綻したと認められる場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」といえるでしょう。

しかしながら、今回のケースの場合は医薬品であり、かつ、医薬品を使用しなければならない原因を作ったのは夫の母だと妻は主張しています。買い物やギャンブルと同一視することはできませんので、直ちに離婚が認められるのは難しいと思われます。

とはいうものの、いくら咳止め薬が必要とはいっても、月10万円というのは家計にとって過大な支出であることは間違いありません。また、本来の咳止め目的ではなく、大量摂取による恍惚感などの理由で咳止め薬を摂取しているようであれば、問題です。

ですので、たとえば妻が病気を治そうと努力せず、漫然と咳止め薬を飲み続け、家計状況がまったく改善の見込みがないような場合は、例外的に「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたり、夫側からの離婚請求が認められる可能性もあります。

【薬物依存症の相談先】

「ダルク」
http://darc-ic.com/darc-list/

「全国薬物依存症者家族会連合会」
http://www.yakkaren.com/zenkoku_kazoku_list.html

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

山口 政貴
山口 政貴(やまぐち のりたか)弁護士 神楽坂中央法律事務所
サラリーマンを経た後、2003年司法試験合格。都内事務所の勤務弁護士を経験し、2013年に神楽坂中央法律事務所を設立。離婚、婚約破棄等を専門に扱っており、男女トラブルのスペシャリストとしても知られる。

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