ダブル不倫をした末に、相手の子を妊娠してしまった——。「自分も悪く、妊娠したことも相手のせいだけではないと分かっています」という女性からの相談が弁護士ドットコムに寄せられました。女性は「あまりにも相手の不誠実な態度に腹が立ちます」と言います。
妊娠は「ケンカをしてちょうど別れるところで発覚した」といいます。しかし、妊娠を伝えた相手の反応は、「お元気で、達者でな」の一言。その後、音信不通となってしまいました。
1年前から別居している女性の夫は不倫したこと、妊娠したことも知っており、女性としては離婚して産みたいと考えているようです。
女性自身にも非があるとはいえ、相手の男性に対して、生まれてくる子のために法的に何かできることはないかと模索しているようです。どのような対応ができるのでしょうか。木下貴子弁護士に聞きました。
●不倫相手に請求できるのは慰謝料と養育費
——相談者が取りうる法的手段にはどのようなものがありますか。
不倫相手に対して、請求できる可能性があるのは、養育費と慰謝料です。このうち、養育費は、生まれた子が夫と婚姻中に懐胎した子であることから、不倫相手との間に親子関係が認められず、当然には請求できません。
そのため、不倫相手に認知をしてもらう必要があります。相談者は1年前から夫と別居しているということです。判例によると、「夫と性行為がなかったことが」「外観上明白な場合」と言えるようであれば、相手方(男性)に対し、認知の請求をすることができるとされています。
——認知の請求は容易に認められるのでしょうか。
一般的には、夫の関与がない調停の扱いに家庭裁判所は慎重です。
まずは、相談者は、産後に夫と生まれた子の間に親子関係が存在しないことを確認する調停を行い、その結果、夫の子ではないと判断された場合に、不倫相手に認知を求めることができます。
調停で認知の合意が出来ない場合には、裁判による認知請求(強制認知)を求めることになります。認知により親子関係が認められれば、養育費の請求ができます。
——慰謝料についてはどうでしょうか。
「主として男性の詐言を信じ」るなど男性側に不貞行為の責任が主にあり、違法性が著しく大きいと評価できる場合には、慰謝料が認められた判例もあります。
しかし、相談者と相手男性との不倫は、男性の妻に対する共同不法行為ですから、相談者は、不倫相手の妻からの慰謝料を請求される可能性も覚悟しておくべきでしょう。
今回はダブル不倫ということですから、仮に、ご相談者の慰謝料請求が認められても、金額は、独身女性の場合に比較して相当低くなる可能性があります。請求するべきか否か、よく考えた方が良いでしょう。
(弁護士ドットコムライフ)