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パパ活と出会い系がバレた夫の逆ギレ発言にみる「支配関係」という根深い問題
画像はイメージです(pixpanjp / PIXTA)

パパ活と出会い系がバレた夫の逆ギレ発言にみる「支配関係」という根深い問題

友人に夫の不倫について相談したところ、夫に「犯罪」だと言われたーー。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せている。

相談者は、夫が約10年間、風俗、パパ活、出会い系に溺れていたことを知った。夫が関係をもった女性の数は把握しきれないが、関係をもった女性たちに年間50万円以上の金額を使っていたことも分かった。

衝撃的な事実にショックを受けた相談者は、友人に相談。すると、夫に「他人にこの件を話すのは犯罪だから」と逆に相談者を問い詰めたため、相談者は不安を感じているという。相談者はどう対応したらよいのだろうか。伊藤諭弁護士に聞いた。

●「名誉毀損罪は成立しない」

ーー夫が言うように、口外することは「犯罪」(名誉毀損罪)なのでしょうか。

名誉毀損罪は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合に成立する犯罪です。「公然と」とは、不特定又は多数人が認識できる状態をいいますが、友人に話すことは特定かつ少数に認識させたに過ぎませんので、名誉毀損罪は成立しません。

ーーでは相談者は安心ですね。とはいえ、相談者の不安は強そうです。

夫としては、やましいことを指摘され、苦し紛れに言った言葉だと思いますが、この相談者には、意外にも刺さってしまったようですね。

冷静に考えていただければ分かると思いますが、第三者への相談が犯罪になってしまうと、家族や上司、友人など、誰にも相談することができなくなってしまい、すべて自分ひとりで悩みを抱えなければならなくなってしまいます。

むしろ、この夫は、「お前のやっていることの方が犯罪だ」と相談者を萎縮させて、他人に相談させないよう孤立させることで支配しようとする行為をしているように映ります。

この夫婦にとっては、不貞関係は表層面の現象に過ぎず、夫が相談者を他者から隔離させることで支配しようとしている関係のほうが根の深い問題だと感じました。

●「もっと早く相談してくれれば」とならないために

ーーどういうことでしょうか。

私は職務上、夫婦間に限らず、職場や地域などにおいても、外部との関わりを断たせて孤立させ追い込んで支配関係を築いているという問題に接することがあります。

問題が表面化するのは、このような支配関係が別の大きな問題を生じさせてしまったときです。第三者の立場で聞けば、「もっと早く相談してくれればそんなことにならなかったのに」と残念に思うケースは少なくありません。

ーーそのような支配関係に陥らないために、どのような注意が必要なのでしょうか。

普段から、友人などの第三者と接点を持ち、相談できる関係を築いておくことは非常に重要です。必要に応じてプロの助力を求めることにも躊躇するべきではありません。

なお、夫を特定できる状態でブログやSNSなどに公開することは、「不特定又は多数人が認識できる状態」で事実を摘示したことになりますので、名誉毀損罪にもなる可能性がありますし、損害賠償請求されるなどといった事態にもなりかねませんので、注意が必要です。

プロフィール

伊藤 諭
伊藤 諭(いとう さとし)弁護士 弁護士法人ASK川崎
1976年生。2002年、弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。中小企業に関する法律相談、弁護士等の懲戒請求やトラブル対応などを手がける。第一法規「懲戒請求・紛議調停を申し立てられた際の弁護士実務と心得」著者。

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