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不倫相手の死亡で全て終わったはずが…相手の妻にバレて慰謝料「300万円」を請求された
写真はイメージです(YUMIK / PIXTA)

不倫相手の死亡で全て終わったはずが…相手の妻にバレて慰謝料「300万円」を請求された

不倫相手が亡くなったとしても、「不倫をした」という事実が消えることはない。中には、相手が亡くなった後、相手の配偶者から慰謝料請求された人もいるようだ。

弁護士ドットコムにも「亡くなった不倫相手の妻から慰謝料請求されている」という40代の女性が相談を寄せている。

相談者は、相手男性が亡くなる前までの2年間、不倫関係を続けていた。彼と会うのは月に1、2回。その間、妻から何らかの請求を受けたことはなかった。

妻から精神的苦痛を受けたとして、慰謝料を求める内容証明が届いたのは、男性が亡くなった後だった。慰謝料の金額は300万円。支払い期限は2週間とされていた。

相談者は「不倫をしたことも、奥さんが苦痛を受けたことも事実です。不貞行為に対する請求は受けようと思います」。しかし、300万円という金額に納得いかない様子だ。

●不倫相手に慰謝料を請求することは可能

そもそも、配偶者が亡くなった後で不倫相手に慰謝料を請求することはできるのだろうか。

東山俊弁護士は「不倫相手に慰謝料を請求する場合に、不倫をした配偶者が生存している必要はありません。不倫をした配偶者が亡くなっても慰謝料を請求することは可能です」と説明する。

不倫相手に関する慰謝料だけを請求する場合には、配偶者が生きていても亡くなっていても、慰謝料額に差はないという。では、相談者が請求された「300万円」という金額は、妥当な額といえるのだろうか。

「不貞の慰謝料の金額は様々な事情により決まります。そのため、いくらくらいかというのは難しいですが、50万円から300万円というのが多いと思われます。事情にもよりますが、不倫の期間が2年と比較的長く、回数も20回程度という事情を考慮すると、300万円という金額は高額過ぎるわけではないと思われます」

●請求できる金額、求償について違いが生じる

「不倫は、配偶者と不倫相手による『共同不法行為』です。そのため、不倫をした配偶者と不倫相手の両方に損害の全額を請求することができ、不倫相手に対して不倫をした配偶者に対する慰謝料の分も請求できるのが原則です。不倫をした配偶者が死亡しても、このことには変わりはありませんが、2つの点で違いが生じます」

どのような違いが生じるのだろうか。

「前提として、不倫をした配偶者が亡くなった場合、不倫に対する慰謝料債務は『不倫をされた妻や子ども等』に相続されることになります。つまり、本来であれば夫が支払うべき慰謝料について、相続人が支払義務を負うことになります。

そのため、まず請求できる金額が減ります。

不倫をされた妻が相続した部分は『混同』により消滅します(慰謝料請求をおこなっているのは妻のため、債権者と債務者は両方ともに妻になる。このように、債権者と債務者とが同じになってしまった場合は債権債務が消滅する)。債権債務が消滅するため、その部分については不倫相手に請求できなくなります。

たとえば、不倫をした配偶者の相続人が妻と子の場合、妻が相続する部分(慰謝料の半分)については不倫相手にも請求ができなくなります。

また、不倫をされた側が相続した部分については、不倫相手に請求することはできますが、求償に関して違いが生じます。

求償というのは、共同不法行為者(不倫をした2人)の一方が自分の責任部分をこえて慰謝料を支払った場合に、もう一方に自分の責任を超過する部分を請求することをいいます。不倫相手が不倫をした配偶者の分の慰謝料も支払った場合、不倫相手はその分について不倫をした配偶者に支払いを請求することができます。

不倫をした配偶者が亡くなっている場合、不倫相手は妻以外の相続人に対して求償をすることができるので、あまり意味がないということになりそうです」

プロフィール

東山 俊
東山 俊(ひがしやま しゅん)弁護士 東山法律事務所
東山法律事務所所長。大阪弁護士会所属。家事事件はもちろん、一般民事事件や刑事事件も幅広く取り扱っている。

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