特許庁は5月11日、「特許文献検索システム」に関する特許(特許第6691280号)を取得したことを発表した。実は、特許庁による特許取得は初めてのことだという。システムを開発した職員に話を聞いた。
●どんな特許?
特許の審査にあたっては、世界中の特許文献を適切に調査する必要がある。しかし、国によって言語や特許分類が異なるという難しさがあった。
特許庁が開発したのは、こうした世界中の特許文献を、AI技術等も用いて希望する言語や特許分類にて一括検索する検索システムおよび管理システムだ。これらシステムの技術に関する特許権が、今回登録された。
特許・商標等の検索サイト「J-PlatPat」によると、2020年1月22日に出願し、3月10日の査定を経て、4月14日に登録された(4月28日 特許公報発行)。特許権者は特許庁長官となっている。
発表によれば、特許権取得の目的は2つ。
・自ら開発した特許文献検索システムを安定的に自己実施できるようにすること
・国内ユーザーや諸外国の特許庁等に広く安心してこの特許技術を活用頂くこと
●名前は「アドパス」。商標登録はこれから
また、前もって2019年7月30日に「アドパス」「ADPAS」を国内商標出願している。同時に「ADPAS」を国際出願もしており、こちらは同年8月6日付で国際登録されている。
今後、国内審査によって出願も認められた場合、この特許文献検索システムの名称となる。
こちらが特許を取得したシステム(図はJ-PlatPatから取得)。特許庁によれば、J-PlatPatの画像の著作権は出願人(今回の場合は特許庁)が有しているという。
●私が開発しました
職務発明者としてアドパスを開発した特許庁の職員7人の名前も載っている。取材に応じた後藤昌夫さん(審査第一部調整課)もその1人だ。
ーー「アドパス」の名前の由来は?
アドバンスド(AD)、パテント(PA)、サーチ(S)から取ったものになります。
ーーすでに特許庁で「アドパス」は稼働しているのでしょうか
2018年12月から導入されて、日本の特許庁の審査官が使っています。外国文献を検索しやすい環境ができてきているところです。
ーー検索システムが作られた背景
近年、中国を筆頭にアメリカなど外国の特許文献の数が増えています。累積で申し上げますと、世界の文献は1億1000万を超えていると言われています。こういう状況で、効率的で質の高い検索をしたいということで開発しました。
ーー特許権者は特許庁? 特許庁長官?
特許庁として権利を持っておりまして、その財産の処分権限は規定上、特許庁長官ということになります。
ーー発明者として名前の並ぶ7人は特許庁の職員でしょうか
はい。特許庁で職務発明として発明した者です。特許審査の審査官であり、なおかつプログラミングの知識を持つ者たちであります。
●特許庁の特許権登録は初めて
ーーこれまでに特許庁が特許を申請して登録したことはありますか
その点に関して、私たちもデータベースを検索しましたが、その範囲において前例は把握しておりません。
ちなみに、商標については、「地域団体商標マーク」がございます。こちらの商標は特許庁長官が権利者として2018年4月20日に登録されています。
ーー特許の申請・登録にあたって、「身内」の審査官が査定したと思われますが、手心を加えたことはありましたか
通常の形で審査をするということで、この出願も特に前もって何か話を通すことはありません。出願しまして、技術分野に基づき、担当の審査室、担当の審査官に割り当てられまして、公正に審査がされたということでございます。公正にさせていただいております。
私は普段、審査官の立場でございます。審査して出願人様に通知を出すという意味で審査官としてJ-PlatPatに名前が出ることはありますが、発明者のほうで名前が出ることは初めてでした。いろいろと勉強になりました。