夫のデリヘル嬢との不貞行為を理由に離婚したいーー。夫が詳細に記した風俗日記など不貞を疑わせる証拠を発見したという女性が、弁護士ドットコムに「離婚のための証拠として使えますか」と相談を寄せている。
相談者によれば、夫は、1年ほど前から特定のデリヘル嬢と本番行為を繰り返しているという。相手は、夫が既婚者であることを知っているそうだ。集めた証拠は、(1)ホテルに出入りする写真、(2)利用しているホテヘルのクーポン、(3)夫の風俗日記(テキストデータ)、(4)店への口コミ投稿、(5)使用済精力剤の袋だ。
風俗日記には、デリヘル嬢を迎えに行く前のこと、行為前の会話から詳細な行為内容、行為中の相手の反応、終わった後の会話、相談者の話題、行為の感想などが事細かに綴られていた。
女性は2人への慰謝料請求、夫との離婚を考えているという。女性が集めた「証拠」が不貞の証拠として採用される可能性はあるのだろうか。鈴木淳也弁護士に聞いた。
●写真と夫の風俗日記を合わせれば、不貞行為を立証できる可能性も
ーー不貞行為があったことを証明するためには、一般的にはどのような証拠があればよいのでしょうか
「性行為または性交類似行為そのものを撮影した写真や動画であれば、不貞行為を直接立証することができます。
しかし、そのようなものが存在することは多くありません。多くの事案では、不貞行為の事実を推認させる証拠により立証していきます」
ーー女性が集めた証拠で、不貞行為を立証することはできるのでしょうか
(Graphs / PIXTA、【IWJ】Image Works Japan / PIXTA(ピクスタ)、tomos / PIXTA、Naoaki / PIXTA)
「女性が集めた証拠も、不貞行為の立証に役立つ証拠となりえます。しかし、各証拠にも強弱があります。たとえば、(5)使用済み精力剤の袋だけを証拠として、不貞行為の立証を行うのは難しいでしょう」
ーー(1)ホテルに出入りする写真が1枚あるようですが、これだけでは不貞行為を立証することは難しいのでしょうか
「写真については、ホテルの室内で一緒にいる写真であれば1枚だけでも構いません。出入りの写真であれば、ホテルに一緒に入るところと出るところの両方を撮影できていることが望ましいです。
今回のケースでは、(1)の写真と(3)の夫の日記と合わせれば、不貞行為の立証は可能かと思います。
そのほか、不貞行為の立証として用いられる証拠としては、メールやLINEでの具体的やりとり、レシート、宿泊施設のクレジットカード明細、交通系ICカード利用履歴等があります」
●相手方である風俗の女性「必ずしも不法行為責任が生じるわけではない」
ーー相手が風俗の女性であっても、夫の行動は「不貞」といえるのでしょうか
「はい。相手の方がいわゆる風俗関係の女性であっても、夫の行動は不貞行為にあたります。一方で、相手方である風俗の女性には、必ずしも不法行為責任が生じるわけではありません。
過去の裁判例においても、ソープランド勤務の女性の場合は、店舗内での性行為は仕事そのものであって自由意思によるものではないとして、不法行為責任を否定しているものがあります。
ただ、今回のケースでは、本番行為が禁止されているいわゆるデリヘル勤務の女性が本番行為をしています。そのため、デリヘル勤務の女性の自由意思に基づく性行為として不法行為責任が認められる可能性はあると思われます」