離婚の財産分与で家を売らない方法は?住み続ける注意点

離婚後も今の家に住み続けたい、子どもの環境を変えたくないと希望する一方で、住宅ローンの名義や財産分与、売却を求める相手との対立に悩む方は少なくありません。

この記事では、離婚時に家を売らず、住み続けるための具体的な方法や潜むリスク、トラブルを防ぐ手順を解説します。

目次

  1. 離婚時の財産分与で「家を売らない(住み続ける)」選択は可能
  2. 離婚時に家を売らない(住み続ける)メリット・デメリット
  3. 家を売らずに離婚時の「財産分与」を成立させる3つの方法
  4. 家に住み続ける場合は「名義」と「連帯保証人」の取り扱いに注意
  5. 離婚後に住み続ける家を「共有名義」で放置してトラブルになったら?
  6. 離婚後も家に住み続ける場合のトラブルは弁護士へ相談
  7. よくある質問(FAQ)

離婚時の財産分与で「家を売らない(住み続ける)」選択は可能

離婚の際、「子どもの環境を変えたくない」「住み慣れた家を手放したくない」と考える方は少なくありません。 結論から言えば、財産分与において家を必ず売却しなければならないという決まりはなく、条件や方法次第で家を売らずに一方が住み続けることは可能です。

婚姻中に購入した家は原則「共有財産」として財産分与の対象になる

結婚後に夫婦で協力して築いた財産は「共有財産」と呼ばれ、財産分与の対象になります。マイホームも例外ではなく、名義が夫・妻のどちらか一方であっても、婚姻期間中に購入したものであれば原則として財産分与の対象です。 ただし、「財産分与の対象になる」=「必ず売却して分ける」というわけではありません。家を売らずに一方が住み続ける場合は、相手に対して何らかの形で財産を分与して公平性を保つのが一般的です。 具体的には、以下のような方法が考えられます。

  • 相手の持分相当額を現金で支払う(代償分割)
  • 他の財産(預貯金、車など)を多く渡して調整する

相手の権利を適切に評価し、対価を払うか他の財産で調整することで、家を売らずに住み続ける選択肢が生まれます。 ▶︎財産分与の基本を知りたい方:「離婚の財産分与は原則2分の1|対象財産と5年の期限

離婚後も「共有名義のまま」にするリスクに注意

「とりあえず今は共有名義のままにしておいて、後で考えよう」と問題を先送りすることはおすすめできません。 法律上、共有名義のまま住み続けること自体は可能です。しかし、共有名義の不動産は、将来売却したり大規模なリフォームをしたりする際に、共有者全員の同意が必要になります。 そのため、共有名義のままでは、将来的に以下のようなトラブルが起こるリスクがあります。

  • 相手と連絡が取れなくなり、いざというときに売却できなくなる
  • 将来、相手から突然「家を売却して現金で分けたい」と求められる
  • 相手が再婚したり亡くなったりした場合、新しい家族や子どもが持分を相続し、権利関係が複雑になる

共有名義での放置は、時間が経つほど解決が困難になりやすい問題です。できる限り離婚のタイミングで名義や権利関係を整理し、決着をつけておくことが将来のトラブルを防ぐポイントです。

「住み続けたい」と「売りたい」で意見が割れた場合の対処法

自分は「住み続けたい」と思っているのに相手が「売って現金化したい」と主張して意見が対立した場合、単に「住み続けたい」と感情的に伝えるだけでは解決しません。 話し合いを進めるには、先ほど紹介した「代償分割」や「他の財産を多く譲る」といった具体的な代替案を提示し、相手にも経済的な不利益がないことを論理的に説明する必要があります。 もし今すぐまとまった現金を準備できない場合は、妥協案として「子どもが学校を卒業するまで」など、一定期間に限定して住み続ける合意(期限付きの居住)を目指すのも一つの方法です。 話し合いが平行線をたどると、相手が離婚調停や裁判を起こし、最終的に裁判所の判断で「家を売却して現金で分ける(換価分割)」という結論にならざるを得ないリスクもゼロではありません。 当事者同士での話し合いが難しい場合は、早めに弁護士などの専門家に相談し、相手が納得しやすい代替案の提示や交渉をサポートしてもらうことをおすすめします。

離婚時に家を売らない(住み続ける)メリット・デメリット

家を売らずに住み続けることには、生活環境を変えずに済むという大きなメリットがある一方で、経済的な負担や将来のトラブルといったデメリット(リスク)も存在します。 まずは、ご自身の状況において「本当に家を売らない選択がベストなのか」を判断するために、両方の側面を整理しておきましょう。

離婚時に家を売らない場合の主なメリット・デメリット比較

項目 主な内容
メリット ・子どもが転校せずに済むなど、生活環境を維持できる
・引っ越し費用や、新居の敷金・礼金などがかからない
・住み慣れた家で精神的な負担を軽減できる
デメリット ・住宅ローンの返済や固定資産税、修繕費の負担が続く
・相手に「代償金(現金)」を支払う必要が生じることがある
・共有名義や相手名義のままだと、将来トラブルになりやすい

家を売らない(住み続ける)メリット

最大のメリットは、離婚による生活環境への影響を最小限に抑えられることです。 とくに小さなお子さんがいる場合、「学区が変わって友達と離れること」は大きなストレスになり得ます。今の家に住み続ければ、転校や転園を避けることができ、離婚という大きな環境変化の中でも、子どもの日常生活の土台を守りやすくなります。 また、実務的なメリットとして、引っ越しに伴う数十万円の出費(引っ越し代、新居の敷金・礼金、家具家電の買い替えなど)や、物件探し・荷造りの手間を省くことができます。

家を売らない(住み続ける)デメリット・注意点

一方で、家という大きな資産を維持し続けることには、以下のような注意点(リスク)があります。

  • 経済的な負担が続く可能性がある
  • 代償金(現金)の準備が必要になる可能性がある
  • 将来の売却やローンのトラブルリスクが残る可能性がある

離婚後も家を持ち続ける場合、住宅ローンや固定資産税、修繕費を無理なく支払い続けられるか、事前に慎重にシミュレーションすることが大切です。 また、家を取得する側は、相手に対して家の価値(住宅ローンを控除した額)の半分程度を現金で支払うことがあります。このお金を「代償金」といい、支払う場合は、まとまった資金を用意しなければなりません。 さらに、家の名義や住宅ローンの契約関係を整理しないままにしておくと、将来トラブルになるおそれもあるでしょう。だからこそ、問題を先送りにせず、離婚のタイミングでしっかりと取り決めをしておくことが重要です。 これらの注意点やリスクに対処し、安全に住み続けるための「具体的な方法」について、次の章で詳しく解説します。

家を売らずに離婚時の「財産分与」を成立させる3つの方法

家を売らずに分ける方法を検討する前に、まずは家の「査定額」と「住宅ローンの残高」を確認しましょう。この2つの金額のバランスによって、財産分与の前提が以下のように異なります。

  • アンダーローン(査定額 > ローン残高):プラスの資産として、差額を夫婦で分け合う
  • オーバーローン(査定額 < ローン残高):財産価値はゼロとみなされ分与対象にならないが、ローン返済義務などの整理が必要

現状のローン残高と家の価値を把握した上で、以下の3つの方法からご自身にとって現実的な解決策を検討します。

1. 相手に現金を渡して名義を自分にする|代償分割

家を取得する側が、相手の取り分(持分相当額)を現金で支払い、家の名義を自分単独にする方法です。これを「代償分割(だいしょうぶんかつ)」と呼びます。 まとまった資金(代償金)が必要になりますが、家を自分だけのものとして確保できるため、離婚後のトラブルが起こりにくい方法といえます。 代償分割を進める際は、相手との金額交渉や、名義変更の際の登記費用・税金の負担などについて話し合う必要があります。手元に十分な現金がない場合でも、相手が合意すれば分割払いにすることも可能です。ただし、その場合は支払いの滞納や後々のトラブルを防ぐために、裁判所を利用しない場合は、必ず公正証書を作成して法的な取り決めを残しましょう。

2. 住宅ローンを自分名義に借り換える

現在のローンが「共有名義(ペアローン)」や「相手名義」になっている場合、自分が単独で新しくローンを組み直し(借り換え)、家の名義も自分に変更する方法です。 これが成立すれば、相手をローンや名義から完全に外すことができるため、将来的なトラブルの火種を断つことができます。 しかし、銀行にとってペアローンの一本化や名義変更はリスクが高まるため、審査は厳しくなります。これまで相手の収入も合算してローンを組んでいた場合、自分単独の収入では借り換えが認められないケースも少なくありません。

3. 期限を定めて住み続け、後で売却する

例として「資金はないが、子どもが成人するまでは住み続けたい」という希望と、「いずれは売却して現金で分けたい」という相手の希望をすり合わせるための折衷案です。 数年間だけそのまま住み続け、将来の約束した時期に売却して代金を分けるという選択肢になります。 この合意をする際は、その間のローン・固定資産税の負担者や、将来の売却時期(子どもの卒業時など)、売却代金の分け方を明確に決めておく必要があります。 この方法は「いずれ家を手放す前提」となるため、永続的に住み続けたい場合には適していません。また、後になって「そんな約束はしていない」といったトラブルを防ぐため、口約束で済ませず、合意内容を公正証書などの公的な書面に残しておくことが重要です。 みんなの法律相談には、「離婚協議中、妻の親から『家の名義分を買い取って』と言われた」という相談が寄せられています。

離婚による持ち家買取について

相談者の疑問 一軒家戸建の売却についてですが、妻と妻の親の勧めで地方単身赴任時に都内に戸建の一軒家をローンで購入いたしました。
>> 質問の続きを見る

松本 知朗の写真 弁護士の回答松本 知朗弁護士 基本的には質問者様に買取の義務はありません。>> 回答の続きを見る

家に住み続ける場合は「名義」と「連帯保証人」の取り扱いに注意

代償分割などで家を売らずに住み続ける場合、家の名義や住宅ローンの契約内容によっては、そのまま住み続けることにリスクが伴うケースがあります。 とくに「名義が相手のまま」であったり、「自分が連帯保証人になっている」場合は、将来のトラブルを防ぐために対策や確認が必要です。

相手名義のローンが残る家に住み続けることで起こり得るリスク

「家の名義も住宅ローンも相手のままで、自分と子どもだけが住み続ける」というケースは少なくありませんが、これには以下のようなリスクが伴います。

  • 相手がローンを滞納した場合、家が競売にかけられ退去を迫られるリスク
  • 相手が亡くなった場合、子どもへの相続(負債や所有権)が複雑化するリスク
  • 名義人が住まなくなることで、銀行の規約違反となり一括返済を求められるリスク(※規約による)

このように、相手名義のまま住み続けているとリスクを抱えることになります。 ただし、具体的にどのようなリスクが生じるかは、契約している住宅ローンの種類や金融機関の規約、相手の現在の状況などによってケースバイケースで異なります。 ご自身の状況でどのような対策が取れるかや、個別ケースごとの詳しい解説・注意点については、以下の関連記事を参考にしてください。

自分が「連帯保証人・連帯債務者」になっている場合

家を購入した際、夫婦の収入を合算してローンを組むなどして、一方が「連帯保証人」や「連帯債務者」になっているケースもよくあります。 ここで注意すべきなのは、「離婚したからといって、自動的に連帯保証人から外れるわけではない」という点です。 連帯保証やペアローンは金融機関との契約です。そのため、夫婦間の話し合いだけで勝手に解除することはできませんし、銀行にとって連帯保証債務を免除することは貸し倒れリスクが高まることを意味するため、簡単には認めてもらえません。 一般的には、「別の連帯保証人を立てる」か「単独名義などでローンを借り換える」といった対応が必要ですが、銀行の審査があるためハードルが高いのが実情です。 いずれの対応も難しい場合は、相手が滞納した際のリスクを踏まえ、弁護士を交えて「定期的に借り換えを検討・報告する」などの取り決めを調停条項や公正証書に残す対策を検討しましょう。 ただし、これはあくまで夫婦間の約束であり、銀行への返済義務そのものを消せるわけではない点に注意が必要です。

離婚後に住み続ける家を「共有名義」で放置してトラブルになったら?

代償分割や借り換えの資金が用意できず、やむを得ず家の名義を「共有名義」のままにして離婚するケースは少なくありません。 離婚時には「当面は住み続けていい」と合意していたとしても、「共有名義」のまま放置してしまうと、将来的に大きなトラブルに発展するおそれがあります。 ここでは、数年後、相手の事情が変わり、突然「自分の持分を現金化したいから家を売却したい」と求められ、話し合いがまとまらなかった場合に生じる法的リスクについて解説します。

相手から「共有物分割請求」を起こされるリスク

共有名義の不動産は、共有者全員の同意がなければ売却できません。 しかし、話し合いが平行線をたどり、相手がどうしても現金化したいと考えた場合、相手は裁判所に「共有物分割請求(きょうゆうぶつぶんかつせいきゅう)」という法的手続きを起こすことができます。 共有物分割請求は、共有状態を解消するための法的な手続きです。相手の同意がなくても申し立てることができ、離婚から何年経過していても、共有状態である限り請求されるリスクがともないます。

共有物分割請求の一般的な流れと「競売」のリスク

共有物分割請求を申し立てられた場合、一般的には以下のような流れで進みます。

  • 協議(話し合い):まずは当事者間で共有状態の解消方法を話し合う
  • 訴訟提起:協議がまとまらない場合、裁判所に訴えを起こす
  • 現物分割の検討:家や土地を物理的に分ける(※戸建てやマンションでは非現実的)
  • 全面的価格賠償の検討:一方が相手の持分を現金で買い取る
  • 換価分割の検討:共有不動産を売却してその代金を分ける(※3~5に優先順位はない)
  • 競売の判決:買い取りもできなければ、強制的に「競売」にかけて代金を分ける

裁判では、「一方が他方の持分を現金で買い取る方法(全面的価格賠償)」が検討されることが多いです。買取資金を用意できれば、代償金を支払って家に住み続けることも可能です。 しかし、双方が買い取りを拒否したり、資金が用意できなかったりした場合、最終的に任意売却をしたり、裁判所の判決によって「家を競売(けいばい)にかけて売却し、その代金を分けたりする」という結論になる可能性が高いです。 競売になると、一般の市場価格よりも安値で売却され、双方にとって大きな経済的損失となる場合がほとんどです。このような事態を避けるためにも、共有物分割請求を起こされた場合は、感情的な対立を避け、早めに弁護士を交えて「適正価格での買い取り」を目指すなど、現実的な着地点を探ることが重要です。

相手が勝手に家を売却しようとしている場合

共有名義のまま放置している間に、相手が勝手に不動産会社に査定を依頼するなどして、強引に売却を進めようとするケースもあります。 共有名義の不動産全体を勝手に売却することはできませんが、相手が「自分の共有持分だけ」を第三者や不動産業者に売却してしまうことは法的に可能です。 見知らぬ第三者(専門の買取業者など)が新たな共有者になると、その業者から「あなたの持分も売ってほしい」「家全体を売却しよう」と交渉されたり、業者側から改めて共有物分割請求を起こされたりするおそれがあるなど、新たなトラブルも生じやすくなります。

離婚後も家に住み続ける場合のトラブルは弁護士へ相談

離婚時に家をどう分けるかという話し合いは、感情的な対立が激しく、当事者同士だけでは冷静な議論が困難なケースが少なくありません。 とくに「夫名義の住宅ローンが残っている」「自分も連帯保証人になっている」「共有名義のままにしようとしている」といった複雑な問題が絡む場合、知識がないまま放置すると、将来的に思わぬ不利益やトラブルに巻き込まれるおそれがあります。 「家を売るか売らないかで話が進まない」「自分と子どもがそのまま家に住み続けられるか不安」という方は、トラブルが深刻化する前に弁護士へ相談することをおすすめします。 早い段階で専門家の客観的な意見を聞くことで、今後の見通しが立ちやすくなります。まずは一度、弁護士の無料相談などを利用して、ご自身の状況を整理してみてはいかがでしょうか。

よくある質問(FAQ)

Q1: 子どもが成人するまでの数年間だけ住み続け、その後売却することはできますか?

夫婦間で合意ができれば可能です。

ただし、その間の住宅ローンや固定資産税を誰がどのように負担するのか、数年後に売却した際の代金をどう分けるのかなど、細かな条件を明確に決めておく必要があります。後々のトラブルを防ぐためにも、口約束で済ませず、合意した内容を公正証書などの書面に残しておくことが大切です。

Q2: 相手が「共有物分割請求」を申し立ててきました。家を追い出されますか?

申し立てられたからといって、すぐに退去を迫られるわけではありません。

最終的に裁判で「競売」の判決が出れば売却に伴う退去が必要になりますが、その前段階で相手の持分を適正価格で買い取る「全面的価格賠償」などが認められれば、そのまま住み続けられる可能性があります。状況に応じた迅速な対応が求められるため、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

Q3: 離婚後、家に住まなくなった側にも固定資産税の支払い義務はありますか?

固定資産税は、原則として「不動産の登記名義人(所有者)」に対して課税されます。

そのため、家を出た側であっても、名義が自身の単独名義や共有名義の場合は、納税義務が残ります。ただし、実際の負担割合については、「住み続ける側が全額負担する」など、離婚時の財産分与や話し合いの中で柔軟に決めることが可能です。後々のトラブルを防ぐため、事前に取り決めをしておくことが推奨されます。

この記事の監修者
中山 隆弘弁護士のプロフィール画像
新百合ヶ丘総合法律事務所
中山 隆弘 弁護士
(神奈川県弁護士会)
監修者のプロフィールを見る

この記事は、公開日時点(2026年07月28日)の情報や法律に基づいています。

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