不倫相手への制裁で現実的なのは「慰謝料請求」などの法的措置
不倫相手に責任を取ってほしいと思っても、職場やSNSで事実を広めるなどの報復は、こちらが法的責任を問われるおそれがあります。
合法的に取り得る対応の中心は、慰謝料請求などの法的措置です。相手の評判や人間関係を傷つけることではなく、法律が認めた手続きの中で責任を求める必要があります。
次の章では、どのような行動が問題になり得るのかを具体的に見ていきます。
不倫を職場やSNSにバラす「社会的制裁」の違法リスク
不倫の事実を職場や親族、SNSに広める行為は「社会的制裁」と呼ばれます。 相手に責任を自覚させる手段のように見えますが、行き過ぎれば刑事責任や損害賠償責任を問われることがあります。 問題になりやすい行為をまとめました。
| 違法になり得る制裁行為 | 問われる可能性がある罪名・責任 |
|---|---|
| 職場や取引先に不倫を伝える | 名誉毀損罪、プライバシー侵害 |
| 会社へ繰り返し電話し、業務を止める | 偽計業務妨害罪、威力業務妨害罪 |
| SNSや動画サイトに実名・写真を公開する | 名誉毀損罪、侮辱罪、プライバシー侵害 |
| 相手の実家に押しかける | 住居侵入罪、プライバシー侵害 |
| 「バラすぞ」と告げて退職や別れを迫る | 脅迫罪、強要罪 |
| 電話を繰り返す、待ち伏せする | 脅迫罪、迷惑行為防止条例違反 |
| 相手を車に乗せて問い詰める | 逮捕・監禁罪 |
いずれも、行えば必ず罪に問われるというものではありませんが、問われる可能性がある以上、実行する前に立ち止まる必要があるといえるでしょう。
職場・会社に不倫をバラす|名誉毀損・業務妨害のリスク
不倫相手の勤務先に事実を伝えると、内容が本当であっても、名誉毀損やプライバシー侵害を問われることがあります。少人数に伝えただけでも、そこから広まる可能性があれば問題になる場合があります。 さらに、会社へ何度も連絡して業務に支障を与えれば、業務妨害が問題になることもあります。 相手に責任を求めるなら、勤務先への通報ではなく、慰謝料請求などの法的な手続で進めるほうがよいでしょう。
監修弁護士より
ご相談を受けておりますと、「勤務先のホームページに公益通報窓口の連絡先があるので、そこに連絡するのは問題ないのでは?」と聞かれることがあります。しかし、公益通報は勤務先そのものの不祥事などを対象とするもので、不倫のような個人的な問題は対象外です。それが職場不倫であっても変わりません。窓口を通しても法的リスクはあるため、推奨できません。
SNSやネットに実名や写真を晒す|名誉毀損・プライバシー侵害のリスク
SNSやネットで不倫相手の実名や写真を公開すると、名誉毀損やプライバシー侵害を問われるおそれがあります。匿名アカウントでも、手続によって投稿者が特定されることがあるため、身元を隠せば安全というわけではありません。 さらに、投稿内容によっては、侮辱や肖像権侵害など別の問題が生じることもあります。
| 投稿の内容 | 問われる可能性がある責任 |
|---|---|
| 事実を挙げずに罵倒する | 侮辱罪(令和4年の改正で法定刑が引き上げ) |
| 性的な画像や動画を公開する | リベンジポルノ防止法違反 |
| 他人が撮影した写真を無断で投稿する | 著作権法違反 |
| 顔写真を無断で公開する | 肖像権の侵害 |
実家に押しかける・親にバラす|住居侵入などのリスク
本人が取り合わないので親に伝えよう、と考える方もいます。しかし、不倫相手の親に慰謝料を支払う義務はなく、伝えても請求が前に進むわけではありません。 かえって、プライバシー侵害や名誉毀損を問われることがあります。 また、相手の実家や住まいに無断で立ち入れば、住居侵入が問題になる可能性もあります。 連絡先が分からない場合は、親や勤務先を通じて追及するのではなく、本人宛てに正式な請求をする方法を検討しましょう。
しつこく電話する・「バラすぞ」と脅す|脅迫・強要のリスク
不倫相手に何度も電話をかけたり、待ち伏せをしたりする行為は、迷惑行為防止条例違反や脅迫にあたることがあります。 相手との関係によってはストーカー規制法の対象になる場合もあり、どの法律で問題になるかはケースによって変わります。 「言いふらす」と告げて退職や別れを迫れば、脅迫や強要が問題になり得ます。どの法律にあたるかを問わず、繰り返しの接触や暴露をほのめかす行為そのものが、責任を問われかねないと考えておきましょう。
社会的制裁は「慰謝料の減額」につながることがある
社会的制裁には、違法かどうかとは別に「受け取れる金額が減る」というリスクがあります。
不倫の慰謝料は、不倫相手と配偶者の二人が合わせて負担するものとして「二人分の総額」として考えられます。そのため、それぞれに満額を請求できるわけではありません。
たとえば総額が300万円と判断されたケースで、不倫相手が100万円を支払えば、配偶者に請求できるのは残りの200万円です。
この総額は、請求する側の次のような行動によって下がることがあります。
| 減額につながり得る事情 | 内容 |
|---|---|
| 配偶者からの受領 | 配偶者本人から慰謝料や解決金をすでに受け取っている |
| 暴露の行き過ぎ | 職場や親族への暴露が、それ自体違法だと反論される余地がある |
| 合意書の条項 | 離婚時の合意書に、不倫相手への請求を制限する内容が含まれている |
これらに当てはまれば必ず減額されるというものではありませんが、減額となる可能性があることは理解しておきましょう。
相手が退職しても慰謝料が増えるわけではない
会社に知らせた結果、不倫相手が降格したり退職したりする例はあります。 ただし、そうした職業上の不利益が生じたことだけで、慰謝料が当然に増えることも減ることもありません。 減額に働くのは、暴露のやり方が行き過ぎて、それ自体が違法だと評価される場合です。 不倫の慰謝料を請求する権利そのものが消えるわけではありませんが、行き過ぎた暴露については相手から別に賠償を求められ、結果として手元に残る金額が目減りする、という形になることがあります。
ダブル不倫では、相手の配偶者に伝えると自分側にも請求が及ぶ
どちらも既婚のダブル不倫では、相手の配偶者に伝えた時点で、不倫をした配偶者が慰謝料を請求される側になります。支払いは同じ家計から出るため、相手に負担を与えたつもりが、結果的に生活を圧迫しかねません。 さらに、慰謝料を支払った側から「本来そちらが負担すべき分を返してほしい」と求められること(求償)もあり、双方の請求が絡み合って解決が長引きやすくなります。 減額の可能性がどこまであるのか判断しにくい場合は、一度、弁護士への相談などで見通しを聞いてみるのも選択肢です。
相談者の疑問
2年前に数ヶ月の社内不倫で1度不貞をしてしまいました。
相手の奥様にばれ、関係を断ちましたが、しばらくして相手に呼び出され奥様と3人で話すと>>> 質問の続きを見る
弁護士の回答好川 久治弁護士
不倫している最中の偶発的な出来事であれば自業自得と言えなくはありませんが、一旦双方の家族の間で決着したことを2年も経って蒸し返し、>>> 回答の続きを見る
不倫相手と配偶者に合法的に責任を求める方法
違法な制裁を避けても、打つ手がなくなるわけではありません。 主な方法は次のとおりです。
| 進め方 | 内容と注意点 |
|---|---|
| 慰謝料を請求する | 不倫相手と配偶者に現実の出費を求められる。二人分の総額で決まり、すでに支払われた分は差し引かれる。請求は内容証明郵便で送るのが基本 |
| 誓約書と違約金を取り決める | 再発の抑止と、違反時に請求する根拠になる。取り方や内容次第で無効になることがあるので、誓約書の内容には注意が必要 |
| 離婚に応じない | 離婚の時期や条件を検討する時間を確保できる。婚姻を続ける負担は双方にかかる |
慰謝料を請求する
最も現実的なのは慰謝料の請求です。裁判上の相場は、不倫が原因で離婚に至った場合でおおむね100万〜300万円、婚姻関係を続ける場合でおおむね50万〜150万円とされますが、事案によって幅があります。 請求には期限があり、不倫の事実と相手が誰かの両方を知った時から3年、不倫があった時から20年を過ぎると請求できなくなります。発覚から時間が経っている場合は早めに動きましょう。
金額の目安や請求の手順は、関連記事で詳しく解説しています。
関連記事不倫・浮気の慰謝料相場は?請求の手順と金額が上がる条件 →慰謝料を請求するときは、内容証明郵便の送り方にも注意する
内容証明郵便は、いつ、誰が、どのような内容の文書を送ったかを記録に残せる郵便です。不倫相手に慰謝料を請求するときにも利用できます。 ただし、送り方によっては、相手の家族や勤務先に請求内容が知られ、別のトラブルにつながるおそれがあります。封筒には「親展」と記載するなど、第三者に内容が伝わりにくい形で送ることが大切です。 また、勤務先への送付は、相手の自宅住所がどうしても分からず、また、メールで連絡するなどの代替手段がない時のどうしてもやむを得ない場合に限定した上で、書面にも相手を罵倒するような表現は入れず、請求の理由や金額を冷静に記載しましょう。 自分で内容証明郵便を送る場合は、差出人として氏名や住所を記載する必要があります。相手に自分の住所などを直接知られたくない場合は、弁護士に依頼し、代理人として通知を送ってもらう方法もあります。
接触禁止の誓約書と違約金を取り決める
不倫相手との関係を終わらせたい場合は、「今後は会わない」といった約束を書面に残し、違反したときの違約金まで決めておく方法があります。約束の内容が明確になるため、再発防止につながるだけでなく、破られた場合に請求する根拠にもなります。 ただし、相手の自宅へ押しかけたり、その場で断りにくい状況を作ったりして無理やり署名させると、後から強迫(怖がらせて意思表示をさせること)を理由に取り消しを主張される可能性があります。やり方次第では、署名を求めた側の行為そのものが問題になることもあるため、感情に任せて書かせるのは避けるべきです。 加えて、取り決める内容にも限界があります。たとえば、今後すべての異性との交際を禁じたり、再婚まで禁止したりするような条件は、行き過ぎたものとして効力が認められない可能性があります。違約金についても同じで、金額を高く設定したからといって、そのまま全額を請求できるとは限りません。 後から「無理に署名させられた」「条件が重すぎる」などと争われないためにも、相手の意思を確認しながら、無理のない内容で取り決めることが大切です。 また、この取り決めを公正証書にしておけば、違約金が支払われないときの手続きを進めやすくなります。
離婚に応じないという選択もある
不倫をした側は、夫婦関係が壊れた原因をつくった側として「有責配偶者」と評価されます。有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められません。相手が離婚を求めてきても、応じるかどうかを判断する余地が残ります。 もっとも、拒み続ければ永久に離婚を避けられるというわけでもありません。別居が長期間に及ぶなど一定の事情が認められれば、有責配偶者からの請求が通ることもあるからです。 離婚に応じないという選択は、相手を縛るためではなく、条件を整えるための時間を確保する手段と考えておくとよいでしょう。
慰謝料を請求するには不倫の「証拠」が必要になる
慰謝料の請求も、誓約書の取り決めも、相手が不倫を認めなければ前に進みません。だからこそ、その前提として「不倫があった」と言える客観的な証拠が必要になります。 証拠がないうちに問い詰めれば、相手は関係を否定したうえで、履歴やアカウントを消してしまいます。一度消された記録は元に戻せないため、先に押さえてから動くかどうかで結果が変わります。
証拠として強いもの、それだけでは弱いもの
証拠として重く見られるのは、二人が肉体関係を持ったと分かる記録です。ホテルへの出入りを写した写真のように、その場面そのものを示せる資料ほど、相手が否定しても覆りにくくなります。
具体的には、次のようなものが挙げられます。
| 証拠の例 |
|---|
| ホテルや相手の自宅に出入りする様子が分かる写真・動画 |
| 2人で宿泊したことが分かる領収書やクレジットカードの利用明細 |
| 探偵や興信所の調査報告書 |
| 肉体関係をうかがわせるメッセージ |
| 不貞を認めた会話の録音 |
このうち会話の録音は、相手の了承がなくても証拠として扱われるのが一般的です。 ただし、盗聴器を仕掛けたり閉じ込めて認めさせたりして得たものは、方法が行き過ぎているとして採用されないことがあります。録音するなら、自分が同席する場にとどめてください。 一方で手元にある記録が、必ずしも決め手になるとは限りません。次のような資料は、それだけでは肉体関係まで示せないと判断されやすいためです。
| 単独では弱くなりやすい資料 | 評価されにくい理由 |
|---|---|
| 位置情報の履歴 | その場所にいた事実しか示せない |
| メッセージのやり取りのみ | 肉体関係まで読み取れない場合がある |
| ホテル入口が数秒だけ映る映像 | 人物の識別が不十分になりやすい |
こうした資料しか手元にない場合でも、複数を組み合わせれば判断材料になります。一つひとつは弱くても、二人の行動の流れが浮かび上がれば、相手が否定しても認められることがあるからです。
証拠集めで別の法的問題を起こさないよう注意する
証拠を集めたいからといって、どのような方法でも許されるわけではありません。 たとえば、相手のスマートフォンや車に無断でGPSを取り付けたり、IDやパスワードを使ってアカウントにログインしたりすると、プライバシー侵害や不正アクセスなど、別の法的問題につながるおそれがあります。 相手の住まいや敷地に無断で立ち入る行為も同様です。こうした方法で集めた資料は、集め方そのものが問題になるだけでなく、裁判で証拠として扱われるかが争われることもあります。 そのため、自分で証拠を集める場合は、無理に相手の行動を追ったり、私生活に踏み込みすぎたりしないことが大切です。
どのようなものが証拠になり、どこまで自分で集められるのかは、関連記事で詳しく解説しています。
関連記事不倫・浮気の証拠一覧|慰謝料請求で役立つ具体例と集め方 →自分のケースで何ができるか迷うときの相談先
不倫相手にどこまで責任を求められるかは、手元の証拠やこれまでの経緯によって変わります。進め方を誤ると、慰謝料の金額に影響したり、かえってこちらが責任を問われたりすることもあるため、自分だけで判断しにくい場面も少なくありません。 そうしたときは、弁護士に相談することで、今ある証拠でどこまで進められるのか、追加で何を残しておくべきか、その後の交渉や裁判をどう進めるのかまで、状況に合わせて整理できます。相手と直接やり取りする負担を減らせるため、感情的な衝突を避けながら進めたい場合にも役立ちます。 まだ請求するか決めていなくても、これからどうしたいかを整理するために相談してみるのも一つの方法です。
不倫の制裁に関するよくある質問(FAQ)
∨ Q1. 浮気相手の配偶者に匿名で手紙を送って制裁してもバレませんか?
匿名で送っても、差出人が特定されない保証はありません。文面の言い回しや消印、前後のやり取りから、送り主が推測されることは十分にあります。
特定されれば、受け取った側から名誉毀損やプライバシー侵害を理由に賠償を求められる立場になります。
∨ Q2. 肉体関係がない場合でも制裁(慰謝料請求など)は可能ですか?
法律上の「不貞行為」は、原則として肉体関係があった場合を指します。そのため、キスなど、肉体関係に至らない段階にとどまる場合は、慰謝料の請求が認められないことが多いといえます。
ただし、度を超えた親密な交際によって婚姻関係が壊れたといえる特段の事情があれば、請求が認められる余地は残ります。どこからが度を超えた交際にあたるかは、連絡の頻度や交際の期間などから個別に判断されます。
∨ Q3. 不倫の制裁に関して、警察は動いてくれますか?
不倫そのものは犯罪ではないため、原則として警察は動きません。当事者どうしの金銭をめぐる争いは民事上の問題にあたり、警察がその中身に立ち入らないという考え方(民事不介入)があるためです。
ただし、暴力を振るわれた、明確に脅された、つきまとわれているといった事情があれば、刑事事件として対応してもらえます。身の危険を感じる場合は、ためらわず警察へ相談してください。
∨ Q4. 不倫相手が「独身だと思っていた」と言っている場合、慰謝料は請求できませんか?
不倫相手に慰謝料を請求するには、相手が既婚だと知っていたか、知らなかったことに落ち度があったことが必要です。そのため、独身だと信じたことに落ち度がなかったと認められれば、請求は認められません。
逆に、少し調べれば既婚だと分かる状況だった場合や、疑うべき事情があったのに確かめなかった場合には、落ち度があったと判断される余地が残ります。相手がそう主張したというだけで結論が決まるわけではなく、二人のやり取りや交際の経緯を見て判断されます。