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えっ! 胸画像2人分を無断転載して「A→Dに!ビフォアフター」広告、違法じゃないの?
ノースリニットの画像が転載されたネット広告(あるぱかさん提供)

えっ! 胸画像2人分を無断転載して「A→Dに!ビフォアフター」広告、違法じゃないの?

「うおおおおノースリニットの季節がやって来たぞおおおおお!!!!!!」。こんなつぶやきとともに掲載したノースリニットの画像が、知らぬ間に「ナイトブラ」のネット広告に転載されていたという「あるぱか」さんの告発ツイートが話題になりました。

●「フェイクネット広告の闇」

画像が悪用されていたのは、「着けて寝てたら99%がA→Dに!」とうたったナイトブラの広告。とあるサイトに表示され、「あるぱか」さんのフォロワーが発見して連絡してきてくれたそうです。

「あるぱか」さんが7月上旬、「うおおおおノースリニットの季節がやって来たぞおおおおお!!!!!!」とツイッターに掲載した画像が、ナイトブラ使用後のAfter画像として使われていたというのです。

ノースリニットの画像が転載されたネット広告 ノースリニットの画像が転載されたネット広告

さらに、画像が悪用されていたのは、あるぱかさんだけではないようです。Beforeとして使用された濃い灰色のノースリニット画像も、「ブスな看護師」さんがツイッターに掲載したものでした。

Beforeの画像として使用された「ブスな看護師」さんは「これでこの手のビフォアフものはガセである場合があると証明されたわけだけど」、「てかだれがビフォーやねんどつくぞ」などとツイート。

Afterの画像として使用された「あるぱか」さんは「フェイクネット広告の闇」「この広告を見てこの商品を買う人がいるなら、私が騙したような気がしてとても気分が悪い。勘弁してくれ」と訴えています。

自分がツイッターに上げた画像が、知らないところで広告に使用されるというのは許しがたいですが、こうした行為は法的に問題ないのでしょうか。また勝手に転載された場合の対処法はあるのでしょうか。齋藤理央弁護士に聞きました。

●撮影者と被写体それぞれに権利がある

写真の無断転載は、法的に問題ないのでしょうか。

「写真を無断転載された場合、写真の撮影者と被写体の人物にそれぞれ、法的な損害賠償請求権が発生する可能性があります。撮影者と被写体が同じ人である場合は、双方の権利を請求できます」

撮影者にはどのような権利がありますか。

「まず、写真の撮影者が請求の根拠とできるのは著作権です」

今回のように、顔が写っていない写真でも著作権は認められるのでしょうか

「体の一部の自撮り写真に著作権法の保護が及ぶかは疑問に思われるかもしれません。

しかし、2019年2月に東京地方裁判所でだされた判例(通称たぬピク事件)では、インターネットに投稿した足の自撮り写真に著作物性が認められています。足の写真は裁判所ウェブサイトで公開されています。

このたぬピク事件の基準で考えれば、体の一部の自撮り写真についても著作権法上保護される可能性があります。著作権侵害に基づいて損害賠償請求を行うことは可能でしょう」

●被写体の権利は?

被写体にはどのような権利がありますか。

「被写体の人物が根拠とするのは肖像権という権利になります。

2005年12月に出された東京地方裁判所の裁判例では、メイクのサンプル写真を、出会い系サイト広告として雑誌に無断で掲載された事案で、肖像権の侵害を認めて100万円の慰謝料を支払うように写真撮影者と広告主に命じています。

この事案で裁判所は、『自身の肖像を出会い系サイトの広告に利用されることには通常人であれば、特段の事情のない限り、同意しない』と述べています」

●顔がうつっていない場合、慰謝料は低くなる可能性

今回のケースは、どう考えられますか。

「他人の写真を同一人物の写真であるかのように装って、商品の品質や効果を誤信させて対価を得る行為が存在すれば詐欺罪に該当する可能性があります。

今回の事例も、同様に考えれば、例えば、詐欺の疑いのある広告に自身の肖像を掲載されることは、通常人であれば同意せず、受忍限度を超えた肖像の利用行為として不法行為と判断される可能性が高いでしょう」

今回のケースは、顔がうつっていませんが、それでも不法行為と認められますか。

「顔が映っていない写真であれば、どこの誰かは容易に判別できません。そのため、精神的な苦痛の度合いは相対的に低いと判断され、慰謝料は先ほどの事案よりもかなり低くなる可能性が高いのではないかと思います」

●無断転載されたら、どうしたらいい?

自分の写真が無断転載されていることに気づいたら、どうすればいいのでしょうか。

「ウェブで画像の無断転載を見つけた場合、とにかくすぐにやって欲しいのは、証拠の確保です。ウェブサイトでは証拠が消失しやすく弁護士が相談を受けたときにはすでにウェブ上で証拠が確認できない場合もあります。

やり方がわからなければスクリーンショットでもやむを得ないのですが、できればウェブサイト全体をPDFで保存する方法がおすすめです。

スクリーンショットしか撮影できない場合は、無断転載の写真だけではなくサイト全体を撮影するようにしてください。また、URLや撮影日時も映っていないと、後で証拠として使えないか価値が落ちます。

他に、無断転載画像がサーバーにアップロードされているはずなのでその画像ファイルと、さらにウェブサイトのソースコードもPDFで保全できれば十全です。あとは、証拠をもって弁護士のところへ相談に行くだけです」

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

齋藤 理央
齋藤 理央(さいとう りお)弁護士 法律事務所碧
法律事務所碧。著作権などコンテンツiP(知的財産)やITトラブルなど情報法分野に重点をおいている。重点分野で最高裁判決、知財高裁判決などの担当案件の他、講演、書籍や論文執筆監修など多数。自身のウェブサイトでも活発に情報発信をしている。東京弁護士会所属。著作権法学会、日本知財学会会員、弁護士知財ネット、東弁IT法研究部等に所属。

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