スーパー銭湯の男湯に、若い女性清掃員が入ってきて非常に不快ーー。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられました。
相談者の男性がリフレッシュするためにスーパー銭湯を利用した際、男湯に若い女性清掃員が入ってくることがありました。中には笑みをこぼしている女性もいて、「非常に不快な思いをした」と訴えています。
仕事内容は、マットやシャンプーの交換など男女問わず誰でもできることでした。さらに施設には男性従業員もいる中、なぜか女性の従業員が男湯に作業に入ってくるそうです。
相談者は、「日本社会において、男性にプライバシーというものはないのでしょうか」と憤っています。
銭湯や温泉施設で異性の従業員が入ってくることは、問題ないのでしょうか。大久保誠弁護士に聞きました。
●プライバシー侵害、建造物侵入罪が考えられるが
私もたまに温泉の大浴場で女性従業員が清掃のために入ってくる場面に遭遇しますが、この相談者のように不快な思いをしたことはありません。これまで考えてきませんでしたが、これを機に法的に考えてみたいと思います。
これが貸切の浴室であれば、自宅と同じく家族外の者が入ってくることは許されるものではないと考えられます。他人の住居や建造物を覗く行為は、立ち入りが禁止された場所に侵入しているため、建造物侵入罪(刑法130条)が成立する可能性があります。
また、公共の場所での覗き行為は、各都道府県が定める迷惑防止条例に違反することになります。公共の場所以外であっても、軽犯罪法にも違反する可能性があります。
つまり、異性・同性を問わず、従業員が浴場や脱衣所に入ってくることは、プライバシー侵害の観点から問題が生じると考えられなくもなさそうです。
しかし、あくまでも法律上はそう検討できなくもない、という仮説です。
●「プライバシーの侵害とは考えがたい」
ーーどういうことですか
大浴場であれば、他の客がいて、お互いの裸体を見られることが前提になっており、自宅や個室の浴室と比べるとプライバシーの権利は弱まっているとも考えます。
今回のケースで言えば、清掃の作業は通常、短時間で終了します。特定の男性の裸体をジロジロと見ない限り、男湯に女性従業員が清掃のため入室することは「正当な業務」です。違法性があるとまでは言えず、プライバシーの侵害とは考えがたいと思われます。
しかし、異性に裸体を見られることに不快感を感じる方もいます。清掃のために入室する場合であっても、同性の従業員に限る方がこれからはベターと言えるでしょう。施設側には、そのような配慮が求められると考えます。