東京医科大が過去の医学科入試で、女性や多浪の受験生を不利に扱う入試不正をしていた問題。いよいよ舞台は法廷に移ることになった。3月22日午後、元受験生ら約30人が原告となり、東京医大を相手取って、損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こす方針だ。
「女というだけで差別されるのは許せない」。原告のひとりである東京都内の20代女性はこう憤る。女性は東京医大を志望校とすることはやめ、現在は、別の大学の医学科を目指して受験勉強を続けている。
問題発覚から半年以上がたち、どんな心境で裁判に加わることを決めたのか、話を聞いた。
●「努力が踏みにじられた」
ーーどんな心境で原告として加わることを決めたのでしょうか
「女子であることを理由に点数が不当に下げられたのは、到底許されることではないです。この問題を風化させず、きっちりけじめをつけたいという思いからです」
ーー取材に応じることへの葛藤はありませんでしたか
「私自身まだ受験生の身ですし、取材に応じることはリスキーなことだとは思っています。ただ今回のことを風化させては絶対にいけない。当事者が黙っていたら風化してしまうかもしれません。その思いが強くて、取材を受けてお話しすることにしました」
ーー東京医科大の入試不正問題はどのように知りましたか
「2018年の夏頃でした。受験勉強のためにほとんどテレビを見ない生活を送っているのですが、自習室から帰宅した夜22時ごろ、自宅で待っていた母がすごく怒っていたんです。『あなた、これ見た?許せない!」って」
ーー女性や多浪の受験生を差別しているという報道を見て怒っていたのですね
「はい、父も母もすごく怒っていました。私はむしろ落ち込んで、夜の寝つきが悪くなってしまいました。夜にしっかり眠れず、昼にぼーっとしてしまい、昼の勉強効率が落ちてしまいました」
●「チャンスが意図的に狭められた」
ーー入試不正を知ったとき、率直にどんな思いがしましたか
「自分の努力が踏みにじられたんだなと。受験は点数に基づいて公平に評価されるものだと思っていましたが、そうではなかった。入り口の段階でこんな差別を、教育機関である大学がやってしまうんですから、とにかく失望しました」
ーーもし合格していたら今頃どうなっていたでしょうか
「大学に普通に通って、日々不安にさいなまれることなく、世の中に不信感を持つことなく過ごせていたのかなと思います」
ーー多くの他学部と異なり、医学部に入れるかは職業選択という意味で大変重要ですよね
「はい。医学部は他と違って職業と直結します。チャンスが意図的に狭められたなかで、競争させられていたのかと。『男尊女卑』がいまだに残っているんだなと感じました。
受験生はみんな同じように努力し、勉強したものを自分の中に積み上げています。その努力は公平に評価されるべきです。女というだけで差別されるのは許せないです」
ーー東京医大にはどのような対応を望みますか
「誠意ある対応を望みます。まず、これまでに受験したぶんの受験料はすべて返還してもらわないと筋が通りません。こちらは差別があるということを知らずに受験しているわけですから。あとは、こちら側が裁判で求めることが認められたらと思います」