通信販売やネットバンキング、旅行の予約など、インターネット上で様々な手続きや買い物ができる便利な時代となった。
そうしたサービスを利用する際、必ず求められるのが「利用規約への同意」だ。読み飛ばす人がほとんどだろうが、よく読んでみると気になる一文が目に止まることもある。たとえば「本規約は、事前の予告なしに変更されることがあります」という表記だ。
実は、こうした記載があるのはごく一部の規約ではない。証券会社や買い物サイト、量販店など業種を問わず多数の「規約」に存在する。最大手の通販サイトの規約にも、「サイト、方針、利用規約をいつでも変更できる」という記載がある。
よく考えると、なんとも不確実な話だ。利用者は勝手に変更された規約にも、縛られることになるのだろうか。消費者問題にくわしい上田孝治弁護士に聞いた。
●規約の変更には「同意」が必要
「契約は、当事者がその内容に合意しているからこそ拘束力をもちます」
上田弁護士はこう切り出した。その原則は、ネットサービスの「規約同意」でも、同じなのだろうか?
「オンライン契約の利用規約は、(1)利用者が容易に規約内容を確認できるように適切に開示されたうえ、(2)『同意』ボタンのクリックなど、利用者が規約に従って契約することに同意していると認められる場合に、はじめて拘束力をもちます。
したがって、規約の一方的な変更は、変更後の内容について新たな合意がない以上、利用者を拘束することはできないのが原則となります。このことは、元々の規約に『規約をいつでも変更できる』といった記載がある場合も同様です」
やはりこうした約束は、双方が同意してはじめて「有効」というのが原則だろう。しかし、例外はあるようだ。
●「黙示の同意」があれば変更が認められる
「もっとも、規約の変更といっても、形式的な変更や、利用者側の不利益にならないものもありますので、常に全利用者から明示的な同意を得なければならないわけでもありません。
したがって、一方的な変更であっても、変更がある旨をあらかじめ告知し、変更内容を適切に開示していれば、利用者がその後も異議なく利用を継続していたことをもって、黙示の同意があったとして変更が認められる場合があります」
このように、利用者側の不利にならないような細かな変更の場合は、《変更が利用者にきちんと伝えられたうえで一定期間内に異論が出なければ問題ない》とみなされる場合もあるようだ。それでは「変更が認められる」ためのポイントは?
「個別のケースで変更が認められるかどうかについては、以下の点などが考慮されます。
(1)変更の具体的な内容(変更が利用者にとって予測可能な範囲かどうかや、利用者にどのようなメリット・デメリットがあるかなど)
(2)変更に関する周知徹底の仕方
(3)適切な予告期間の設定の有無」
このような要素を考慮して判断した結果、運営者側の「一方的な規約変更」が認められない場合もありうるということだろう。自分にとって重要なサービスについては、規約変更の通知に注意しておく必要がありそうだ。