排せつ物を入れたビニール袋、それも1000個超を捨てた疑いで、男性が逮捕された。福島民友の報道(5月24日)によれば、男性は4月上旬、自室で処理した排せつ物の入ったビニール袋を県道に投棄したという。2018年1月上旬から投棄を始め、これまでに1000個超にのぼるとみられる。
今回の逮捕容疑は、あまり耳慣れない「廃棄物処理法」違反だった。なぜ今回、男性は
逮捕されたのか。ビニール袋に入れず、そのまま外で排せつしたような場合でも、罪に問われるのか。西浦善彦弁護士に聞いた。
●実刑判決の可能性はゼロではない
ーー本件で被疑者は容疑を認めているということですが、逮捕後、この男性はどのような量刑になるのでしょうか。
廃棄物処理法違反(25条1項14号)は、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金(又はこれの併科)に処されると定められています。
一概には言えませんが、前科がなく、また再犯の恐れがない場合には、執行猶予付きの懲役刑になる可能性があります。
ただし、今回の事件は、同様の事件が40件程度発生しており、投棄されたビニール袋が1000個以上ということです。逮捕となったのも、反復継続して排せつ物を投棄した容疑に着目したからでしょう。これら全てが被疑者の犯行であるとされた場合、実刑判決が全くないとは言い切れません。
● ふん尿は「みだりに」「捨ててはならない」と定められている
ーー 今回のケースではありませんが、公道で排せつし、そのまま立ち去った場合でも、廃棄物処理法違反に問われるのでしょうか。
廃棄物処理法第2条によると、「ふん尿」も「廃棄物」に該当し、同法第16条により、「みだりに」「捨ててはならない」と定められています。
「みだりに」とは、「正当な理由なく」という意味ですが、排せつ物の場合、通常トイレで用を足すのが当たり前で、それをビニール袋に入れて県道や町道に投棄すること自体、極めて異常なことです。正当な理由などなかなか思いつきません。
このことからすれば、一般の人が公道で排せつしたような場合も、同様に廃棄物処理法違反(25条1項14号)となり、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処される可能性が全くないとは言えません。
また、未遂の罪も罰せられますので、排せつが終わる前でも罰せられる可能性は論理上存在します。なお、ペットの排せつ物を公道に、そのまま放置しておくことも同様に廃棄物処理法違反に該当することになります。
ただし、刑事罰を科すには科すだけの高い違法性が必要であり、現実には1回公道で排せつしただけで、逮捕され、刑事罰が科される可能性はほとんどないと思います。