どこで名簿が出回っているのかわからないが、平日、休日、昼夜問わず、しつこくかかってくる迷惑なセールス電話。知らない番号からの着信につい出てしまって、後悔することも少なくない。
気の優しい人は「ガチャ切り」できず、相手の巧みな話術に巻き込まれて、なかなか切らせてもらえないことも。また、たとえ「興味ありません」「今いそがしいです」ときっぱり断っても何度もかかってくるものだ。
そんな迷惑な電話を撃退するため、いろいろと工夫する人がいる。たとえば、女性のテレフォンアポインターだった場合、逆に「ねぇねぇ、今、どんなパンツ履いてるの?」とセクハラまがいの質問をするそうだ。
そうすれば、すんなり電話を切らせてもらえるという。だが、このご時世、そんなことをしていたら、人間性を疑われるおそれもある。こんな迷惑電話の撃退方法は法的に問題ないのだろうか。鈴木淳也弁護士に聞いた。
●倫理上は問題あるが・・・
「本来は好ましくないことですし、倫理的に問題があると思いますが、この程度であれば、法的には問題ありません」
鈴木弁護士はこのように述べる。どんな理由があるのだろうか。
「電話をかけている方としては、想定外の反応に困惑されると思います。しかし、普通に考えれば、そのような反応をする相手に対してセールスしても、時間の無駄であると考えて電話を切るでしょうから、損害もありません。したがって、民事上問題ないです。
また、刑事上、脅迫しているわけでもなく、この程度であれば、業務の妨害と言えないため、脅迫罪や業務妨害罪は成立しません」
●業者はまず、電話が「勧誘目的」であることを告知しないといけない
迷惑なセールス電話は規制されていないのだろうか。
「電話勧誘販売取引として、一定の規制が定められています(特定商取引法)。具体的には、販売業者は、電話して勧誘をはじめる前に、その電話が勧誘目的であることを告知する義務を負います(同法16条)。
また、契約をしない意思表示をした人に対して、契約締結の勧誘を継続することや、再度の勧誘をしてはならないことになっています(同法17条)。
これらの規程は、電話勧誘というのが、不意にかかってくるものなので、消費者に電話勧誘を受けるかどうか判断する機会を与える必要があり、電話を切りにくい状況におかれやすい消費者を保護する必要があるため、設けられています」
●弁護士がすすめる「スマートな対処法」
契約しない「意思表示」とはどのようなものなのだろうか。
「契約しない意思表示とは、明示的に告げた場合だけでなく、黙示的なものも含みます。『電話してこないで!』と一言告げたり、何も言わずに電話を切ることを繰り返しても、契約をしない意思表示といえます」
結局、迷惑なセールス電話にどのように対応するのがいいのだろうか。
「通常の業者であれば、冒頭で『勧誘であること』を明示するはずです。その段階で拒否する旨を告げて電話を切るのがスマートな対処法といえます」