全国の選挙を取材している選挙ウォッチャーちだい(本名・石渡智大)氏(46)が、「NHKから国民を守る党」(代表・立花孝志氏)を「反社会的カルト集団」などと表現したことに対して同党が名誉を毀損されたとして160万円の損害賠償を求めた裁判で、東京地裁(裁判長:阿部雅彦)は11月27日、N国党の訴えを退けた。
●今夏の東京都知事選をめぐって発言
判決文などによると、2024年6月から7月にかけてあった東京都知事選で、「NHKから国民を守る党(N国党)」は24人の候補者を擁立した。
これに関連して、ちだい氏は2024年6月、X(旧ツイッター)や動画配信サイトで、以下のような投稿や発言をした。
<今日も反社会的カルト集団『NHKから国民を守る党』が展開しているポスター掲示板のショバ代ビジネスについて、無料で記事にしていきます。メディアや警察の皆さんに、背景などをしっかり理解していただきたいので、少なくとも、あと数日はポスターの話をしていきます。>
<尊師っていうのも、教団幹部とか言ってるけど、出家信者とか言ってるけど、だってこいつらもう、物の善悪の判断がつかないんだよ。サリンをまかないオウムと一緒なんだから、ほとんど。内容としては、サリンをまくほどの知識とか知能はないから、だからサリンをまかないオウムみたいなもん。危ない奴らの集団であることは間違いないですね、N国って>
ちだい氏のこれらの投稿や発言に対して、N国党は「原告が、原告と対立している人、原告を裏切った人やその家族を大量に殺害する危険な宗教団体であるという事実を摘示して、原告の社会的評価を低下させるものである」などと主張した。
東京地裁が入る庁舎
●東京地裁「意見や論評の域を逸脱していない」
この日、東京地裁の阿部裁判長は判決で、「反社会的カルト集団」などの表現について、「原告について、違法と評価される行為を平然かつ盲目的に次々と行う集団又は団体であると述べていると解される」などとし、「原告に係る特定の事実を摘示したものとは認められず、意見あるいは論評を表明したものと認められる」と判断した。
そして、N国党について「不法行為に該当するサービスを一般市民に向けて提供し、以後も法律を守らずに活動を行っていくとの発言をしていた」ことなどに触れた上で次のように述べてN国党の請求を棄却した。
「いずれも原告の社会的評価を低下させる意見あるいは論評の表明であり、原告の名誉を毀損するものであるが、公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図ることにあり、その前提としている事実が重要な部分について真実であると認められるものであり、かつ、意見あるいは論評としての域を逸脱したものとはいえないことから、違法性を欠くものと認められる」
●代理人「面白いと思って追従すると引きずり込まれる」
判決後に記者会見を開いたちだい氏は、「世の中の方に『NHKから国民を守る党』がいかに反社会的であるかということが伝わればこの裁判も意味があると思う。訴えられるたびに、(N国党が)反社会的な人たちですよということを伝えていきたい」と話した。
代理人の石森雄一郎弁護士は、N国党について「一見面白いと思ってそれに追従していくと、いつの間にか自分たちも民法上の不法行為とか、場合によっては犯罪行為にまで及んでしまうことに引きずり込まれてしまう。この一端が判決の中に短いながらも認定されていることはとても意義深い」と述べた。