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 図書館職員の8割近くが「非正規」 協会が待遇改善求め「異例」の要望
会見するJLAの理事長ら(2023年6月6日、弁護士ドットコム撮影)

図書館職員の8割近くが「非正規」 協会が待遇改善求め「異例」の要望

公立図書館で非正規雇用の職員が増えていることを受けて、日本図書館協会(JLA)は6月6日、東京・霞が関の文科省で記者会見を開いて、非正規職員の待遇改善を求める要望書を全国の自治体に送付したことを明らかにした(5月31日に送付)。

これまでも非正規職員の増加を問題視してきたJLAだが、今回のような要望書を自治体に対して出すのは初めてという。

JLAの調査によると、全国の公立図書館で働く非正規職員は76%となっており、2000年代に入ってから増加傾向にある。また、平均賃金も月給13万円程度で、自分以外の家族が主な収入源となっている職員は7割を超えた。

JLAは、こうした非正規職員が増えることで、地域に根ざした質の高いサービスの維持や、急変するデジタル環境に対応できなくなるとして、懸念を示している。(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)

●図書館のサービスの維持が困難に

要望書は、都道府県知事や全国の市長、東京都23区長に送った。要望書では「図書館職員の専門性の観点からの賃金や労働条件の改善」や、「会計年度任用職員の雇用更新時には職員の培ってきた知識や経験にもとづいた公募によらない任用」などを求めている。

JLAの植松貞夫理事長によると、2000年代に入り、図書館数は増加傾向にあるものの、正規雇用の専任職員は減少し、非正規職員が増加しつづけているという。

画像タイトル JLA会見資料より

植松理事長は「会計年度雇用職員制度が導入されるなど、制度的に図書館で長期間働くことが難しく、給与も低いという問題があります。正規雇用職員を増やしてほしいと訴えてきましたが、非正規雇用職員の処遇改善も必要です」と指摘する。

「図書館は多くの方が、新刊が借りられる場所、子どもが自習する場所と思っていらっしゃるかもしれませんが、情報環境が大きく変わる中、正しい情報を提供できる場所が図書館です。また、人々がさまざまな問題を考えることができるよう、さまざまな資料をそろえるという仕事も重要です」(植松理事長)

こうした図書館の仕事は、短期雇用である非正規雇用職員の立場では難しく、JLAでは、図書館の質の高いサービスの維持が難しくなるとして、今回の要望書を出したという。

●非正規雇用職員「週5日働いても食べていけない」

記者会見には、自身も会計年度任用職員として学校図書館で働く、JLA「非正規雇用職員に関する委員会」の利光朝子委員も参加し、非正規職員が置かれた苦しい状況を訴えた。

「私たちは、1年ごとに履歴書を提出させられ、採用面接も毎年受けています。毎年、来年はどうなるんだろうという心理的負担は大きいです。

また、賃金ですが、私は1日7時間週4日、時給1250円で働き、昨年の年収は168万円でした。週5日の人でもなんとか200万円を超えるくらいです。とても食べていける額ではありません。安心して働ける環境が必要だと思います」

画像タイトル JLA会見資料より

JLAの調査によると、5割が正規雇用である男性職員に比べて、女性職員の非正規雇用の割合は高く、世帯で主な生計を担っていない女性が非正規雇用されている実態もあるという。

今後、JLAでは要望書に対する自治体からの回答を求め、各地の図書館などと協力してさらに非正規職員の待遇改善を求めていくという。

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