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虐待動画の猫、保護されず「YouTuber」の手に戻る…弁護士は「警察の対応」も問題視
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虐待動画の猫、保護されず「YouTuber」の手に戻る…弁護士は「警察の対応」も問題視

YouTubeに投稿された「猫の虐待動画」に非難が殺到している。猫は沖縄の2人の男性ユーチューバーによって育てられていたが、警察の手にわたったのち、所有者の男性のもとに返されたという。

猫の動画を見た弁護士は、ユーチューバーらの行為について、動物愛護法違反の疑いは濃厚であるとしたうえで、彼らに引き続き飼育を許した沖縄県警の対応を問題視する。

●ボロボロの体、顔から流血…ひどい「虐待」

問題の動画は、2人の男性によるYouTubeチャンネルで、8月19日に配信された。

動画はひどく散らかった室内を映す。若い男性がゴミをかきわけると、1匹の猫が隠れるようにして潜んでいた。首根っこを片手でわしづかみにされ、カメラの前に引きずり出された猫の姿は、顔から血を流し、毛が剥がれ落ちて、皮膚がむきだしになった痛々しいものだった。

この猫はもともと、カメラを撮影していたもう1人の男性が所有していたようだ。一時的に、若い男性に預けていたとみられる。

あまりの惨状に、動画には「虐待」を指摘するコメントが相次いだ。その批判は、若い男性だけでなく、相手の飼育能力の乏しさを知りながら預けた男性にも向けられた。また、多くの人が警察に通報をしたようだ。

男性らは8月23日、更新した動画で、猫が警察に一時的に引き取られていったことを報告し、視聴者に謝罪した。

所有者の男性は猫を保護団体などに譲渡することなく、自らが「責任を持って世話していく流れになると思う」とした。

しかし、この謝罪動画にも、責任ある団体に譲渡するべきだとのコメントが目立った。

●ユーチューバーの行為は「動物愛護法違反の疑いが濃厚」

虐待された猫を助けるため、沖縄の保護団体などと連携している寺林智栄弁護士によれば、猫は警察から保護団体などの手をわたり、結局は所有者の男性に引き渡されたという。

寺林弁護士は動画を確認したのち、大変な事態が起きていると考え、すぐさま警察に問い合わせをした。警察の対応に問題があったと話すが、まず、ユーチューバーの行為の法的な問題点を指摘する。

「猫を預かった若い男性は、劣悪な環境において医療が必要な状態であるにも関わらず放置しているのですから、虐待だと認められる可能性があります。

しかも、この男性は動画のなかで、猫を殴ったことを半ば認めており、猫の毛を刈ったと思しきバリカンも映っています。それらは暴行をしたことを強く推認させます。

また、事態発覚後にこの男性が猫の首根っこを掴んでぶら下げている画像もあり、暴行に該当します。動物愛護法違反の嫌疑は濃厚です」

首根っこを掴む若い男性 首根っこを掴む若い男性

撮影者であり、猫の所有者である男性も共犯的な立場にあると考えられるという。

「撮影者の男性は、このような行為を黙認していたからこそ動画を撮影してYouTubeにアップしたものと考えられ、少なくとも黙示的な共謀があったと推認されます」

●男性に猫を育てさせることを許す警察はおかしい

このような評価をしている以上、寺林弁護士は、男性らが引き続き猫を育てることは、ふさわしくないと考えている。

そこで、警察に迅速な対応をもとめたものの、結果は期待したものではなかったようだ。

「沖縄県警本部と、担当の沖縄署に8月22日の15時半頃から何度か電話しましたが、なかなかつながらず、最終的に沖縄署との間で話ができたのは、18時前でした。

警察は、動画をつぶさに観察することなく、本人たちから話を聞いただけで、事件性がないと性急に判断しました。

また、謝罪動画での彼らの言動から、警察は家の清潔さだけで、預けた男性に猫を飼育させてもよいと判断している節があり、猫の今後の飼育環境について何が必要か正確に把握できていません。

警察は、再度動画を確認し、かつ市民から寄せられた意見に耳を傾けた上で、彼らの氏素性、他の動画まで調査する必要があります。そうすれば、自ずと猫を預けた男性に引き渡したことが誤りであり、然るべき保護団体に猫を引き渡しさせるのが正しいと判断できるはずです」

●沖縄県警は回答差し控え

なお、弁護士ドットコムニュースでは、一連の経緯についての取材を申し込んだが、沖縄県署本部生活保安課は8月24日、「広報案件ではないため、回答は差し控えます」とした。

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