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裁判で「わいせつ」認められても教師の「懲戒なし」…元原告女性が札幌市教委に申し入れ
会見する石田郁子さん(2020年12月28日/弁護士ドットコム撮影/文科省)

裁判で「わいせつ」認められても教師の「懲戒なし」…元原告女性が札幌市教委に申し入れ

15歳から19歳にかけて、札幌市立中学の男性教師にわいせつな行為をされたとして、提訴していたフォトグラファーの石田郁子さんは12月28日、札幌市教委に対して教師を懲戒処分するよう申し入れたことを明らかにした。

東京高裁は12月15日、損害賠償請求できる期間が過ぎているとして、石田さんの訴えを退ける一方、札幌市や男性教師側が否定していたわいせつ行為は「認められる」とした。

しかし判決後、札幌市教委から石田さんに対して連絡はなく、石田さんは12月18日、札幌市教委に対して教師の懲戒処分と処分前に退職届を受け取らないよう申し入れた。石田さんが札幌市教委に教師の懲戒処分を申し入れるのは今回で3回目だ。(弁護士ドットコムニュース・猪谷千香)

●「教師が否定している」で処分なし

石田さんが被害に遭っていたのは中学3年生だった15歳から大学1年生の19歳まで。大学で教育実習に行った石田さんは、教師の行為が「倫理的におかしい」と感じ、大学卒業後の2001年、札幌市教育委員会に再発防止や教師の退職を求めた。しかし、元小学校の校長だったという女性が対応して、「子ども扱いされて終わりました」(石田さん)。

女性は、石田さんに「若いころはいろんなことがあるわよね。今日はすっきりして帰ってちょうだい」というだけで、とりつくしまもなかったという。

その後、2015年にある児童買春事件の裁判を傍聴して、教師による行為は不法行為だったのではないかと思った石田さん。2016年にあらためて札幌市教育委員会に対して、第三者委員会による調査と教師の懲戒処分を求めて申し入れをおこなった。

しかし、1年にわたり話し合いが続いたものの、教師が事実を否定しているという理由から、札幌市教委はなんら対応しなかった。石田さんは同じ頃にPTSDを発症、2019年に教師と札幌市を提訴せざるをえなかった。

●「本来であれば教委が自主的に処分すべき」

石田さんは12月28日、文科省記者クラブで会見して、「教師の行為は、北海道青少年健全育成条例、児童福祉法等に違反しており、地方公務員の信用を失墜させる非違行為であることは明らかです」と指摘。これまで何もしてこなかった札幌市教育委員会の対応を厳しく批判した。

「裁判をして事実認定されても、加害者は罰せられません。本来であれば私が申し入れなくても、教育委員会が自主的に調査し、懲戒免職となる事案です」

石田さんによると、札幌市教委からは12月25日に「 現在、判決文を精査しており、今後について内部で検討しているところでございます」という回答が届いたという。地方公務員の懲戒処分については時効の規定はない。

現行法では、わいせつ行為をした教師が教員免許を失っても、最短3年で再取得が可能となっている。これに対して、被害者や保護者からは、再取得できないよう求める声が相次いているが、文科省は法改正を断念した。

石田さんは「私のケースでも今教師が処分されたとしても、定年前に再取得が可能です。法改正断念というニュースには憤りを感じます。わいせつ行為をした教師が学校現場に戻ることはやめてほしいと思います」と話す。

石田さんは1月13日、母校である北海道大学のオンラインイベントに参加して、あらためて学校での性暴力の再発防止を訴えていく。

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