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伊藤詩織さん「誹謗中傷の拡散、心に傷が刻まれた」提訴までの3年間を語る
伊藤詩織さん(2020年6月8日、東京都、弁護士ドットコム撮影)

伊藤詩織さん「誹謗中傷の拡散、心に傷が刻まれた」提訴までの3年間を語る

ジャーナリストの伊藤詩織さんが6月8日、元TBS記者の山口敬之さんからの性暴力被害を訴えた事件を巡りツイッターに虚偽の内容を投稿され名誉を傷つけられたとして、漫画家のはすみとしこさんら3人を相手取り、慰謝料など計770万円の支払いと謝罪広告、投稿削除などを求めて東京地裁に提訴した。

提訴後、都内で会見を開いた伊藤さんは「木村花さんの件を耳にして、本当にショックでした。やはりスピード感を持ってアクションを起こさなければいけないと思い、急ぎ足で訴訟をスタートすることにしました」と提訴に至った経緯を話した。

東京地裁は2019年12月18日、伊藤さんが元TBS記者の山口敬之さんからの性暴力被害を訴えた訴訟の判決で、山口さんが合意のないまま性行為に及んだと認定し、330万円の支払いを命じている(山口さんが控訴中)。

●伊藤さん「心に傷が刻まれてしまった」

伊藤さんは2017年に被害を公にした時から、誹謗中傷に悩まされてきた。SNS上だけでなく、ダイレクトメッセージやメールで直接届くものもあった。命の危険を感じるようなものや家族や友人に向けられた内容もあったという。

最初は訴訟を起こすことも迷っていたが、この3年間誹謗中傷が日常的に続き「何かしらのアクションが必要」と決意したという。

「言葉に真正面から向き合って争うことがつらかったし、(訴訟をすることに)どのくらい意味があるかわからなかった。自分が見なければいいと言い聞かせていたところがあった。

生活の中でインターネットは欠かせないもので、それを見るなというのは難しい。気にしないように思っていても、心に傷が刻まれてしまった。

誹謗中傷する言葉が消えずにどんどん拡散されていくのを見て、今は自分がアクションを起こさなければ終わらないし、ネガティブな言葉が広がり、発信していいということにも繋がってしまう。それを許してはいけないと思いました」

●伊藤さんに対する攻撃的なツイートが1割

今回訴えたのは、はすみとしこさんのほか、はすみさんの投稿をリツイートした2人。ツイート内容などから相手を特定したため、発信者情報開示請求はおこなっていないという。

訴えるツイートを選ぶにあたっては、荻上チキさんらでつくるチームが絞り込みに協力した。

荻上チキさん 荻上チキさん

調査は今年2〜5月におこなわれ、対象は、ツイッターやFacebook、2ちゃんねる(5ちゃんねる)、トレンドブログ、Yahoo!知恵袋、まとめサイト、Togetter、はてなブックマーク、YouTube、ヤフコメなどのウェブサービスとした。

調査の結果、これらのサービスで伊藤詩織さんに言及した投稿は約70万件あり、うちツイッターは約21万件あった。ツイッターは攻撃的なツイートが約10.6%、名誉毀損に当たると考えられるツイートが約4.5%だったという。

荻上さんによると、サービスごとに攻撃的な投稿や名誉毀損に当たる可能性のある投稿を絞り込んだが、その割合はサービスによってまちまちだという。

●「プラットフォームは何らかの対策を」

代理人の山口元一弁護士は、一つ一つは法的に問題がない投稿でも、批判の量が本人の負担となると指摘する。

山口元一弁護士 山口元一弁護士

「木村花さんへの誹謗中傷を見ていると、『うざい』、『番組からいなくなった方がいい』というツイートは、嫌悪感情を端的に示すものではあるが、一つ一つは法律上名誉毀損や侮辱に当たらない。

だが、こうした不法行為や名誉毀損に該当しない書き込みが何千何万と個人に押し寄せると、すっかり参ってしまう。人を傷つけるコメントが溢れるとき、各プラットフォームは何らかの対策を取るべきではないか」

今後、他の誹謗中傷に対しても、順次訴訟を起こしていく予定だという。

伊藤さんは「発言しやすい環境にしていくためにも、こうした問題に一つ一つ向き合って、被害を受けた時にアクションを起こしやすい環境づくりに今後していけたらなと思っています。

周りの人は、オンラインだとスルーしてしまうことがあるが、おかしいと思ったら傍観者にならずに通報するというアクションをとってもらえたらと思います」と呼びかけた。

弁護士ドットコムニュースでは、はすみとしこさんにコメントを求めています。回答があり次第、追記します。

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