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年末年始「渋滞40km」予想 イライラが招く初歩的な交通違反
写真はイメージです(TOSHI.K / PIXTA)

年末年始「渋滞40km」予想 イライラが招く初歩的な交通違反

この年末年始もひどい交通渋滞に巻き込まれそうだ。わかっていても、実家への帰省や旅行のため高速道路を選んでしまう。高速道路各社によれば、今回の年末年始の渋滞予測で、ピーク時の渋滞が40kmに及ぶ箇所が東北自動車道と東名高速でひとつずつあるという。(詳細:https://www.e-nexco.co.jp/pressroom/press_release/head_office/h30/1127b/

渋滞にはまると、サービスエリア(SA)まで時間がかかるためトイレを我慢するのがつらいし、マメにドライバーを交代することも難しくなる。高速では、一般道のように、ちょっと路肩にとめてドライバーをさっと代わるということもできないからだ。

渋滞はドライバーや同乗者のイライラをつのらせてしまいがちだが、どのような交通違反に気をつけるべきだろうか。改めて基本的な点を平岡将人弁護士に聞いた。

●携帯トイレの準備は役立つ

ーーまず高速道路をつかう際の注意点を教えてください

「高速道路に入る前には、車両が燃料不足、ガス欠等にならないように、あらかじめ点検をしておく必要があります(道路交通法(以下、法名略)75条の10)。

点検をしなかった場合には3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金(故意の場合。119条1項12号の3)または10万円以下の罰金(過失の場合。同条2項)に処される可能性があります。

ただ、この罰則は、燃料不足で車線上に停止してしまった場合に限られて適用されますから、万が一燃料不足となったら、路肩や路側帯に停止すれば処罰はされません」

ーー渋滞中にトイレに行きたくなったら、どうしたらよいのでしょうか

「高速道路では、『停車し、または駐車してはならない』(75条の8第1項)と規定されています。

この例外として、『故障その他の理由により停車し、または駐車することがやむを得ない場合において、停車または駐車のための十分な幅員がある路肩または路側帯に停車し、駐車するとき』(同条1項2号)は、停車または駐車が許されています」

ーー故障はわかるとして、「その他の理由により停車し、または駐車することがやむを得ない場合」とは、どういうことでしょうか

「運転者の過労等により物理的に運行できなくなった場合がまず該当します。

さらに、降雪時のワイパーの作動不良や便意を催した場合等、サービスエリアまで相当距離があるためそのまま運転を継続すれば、交通の危険を生じさせるおそれがあり、停車しまたは駐車することがやむを得ない場合をいう、とされています。

ただ、路上でのトイレは基本的には軽犯罪法違反ですから、サービスエリアに寄れるときによって、休憩やトイレを済まし、計画的に運転しましょう。また、携帯トイレという便利なものもあるので、いざというときのために用意しておくのもいいかもしれません」

●「画面注視」→前方注視義務の違反

ーー渋滞中だと注意が散漫になったり、イライラしたりすることもありますよね

「はい。渋滞の場合には、集中力が切れたり、気の緩みや苛立ちから事故を起こしたり、あるいは事故に巻き込まれてしまう可能性もあります。

なかなか進まないからといって、携帯電話やナビゲーションの画面を注視しての運転は前方注視義務違反です」

ーー車線変更も要注意ですよね

「空いている車線に、よく安全確認を確認せずに車線変更をしてしまい、後続車と衝突してしまう事故はよくあるケースです。

自動車が車線変更をする場合、ウインカーの点灯が必要とされており(道交法53条1項)、3秒前からの合図が必要とされています(道交法施行令21条)。

合図を出したのと同時に進路変更を開始してしまうと、後方の安全確認が不十分となりがちな上、後方の車両も進路変更を予測できませんので、事故になる確率が高くなりますので、気を付けてほしいところです」

●「譲り合いの精神を」

ーー「あおり運転」によるトラブルも少なくないようです

「最近、あおり運転のニュースが報道されていますが、イライラが募り、思いやりがなくなるとそういったドライバーどうしのトラブルが増えていく原因にもなります。

何十キロという渋滞にあっては、1台2台抜いたところで、たいして時間は短縮されません。ドライバーどうしの譲り合いの精神で、気持ちよく年末年始をすごしてほしいと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

平岡 将人
平岡 将人(ひらおか まさと)弁護士 弁護士法人サリュ銀座事務所
中央大学法学部卒。全国で10事務所を展開する弁護士法人サリュの前代表弁護士。主な取り扱い分野は交通事故損害賠償請求事件、保険金請求事件など。著書に「交通事故案件対応のベストプラクティス」ほか。実務家向けDVDとして「後遺障害等級14級9号マスター講座」「後遺障害等級12級13号マスター講座」など。

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