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交通事故の被害者が「救護不要」と現場を立ち去る…ドライバーはどう対応すべき?
「大丈夫」と言わない、言わせない(YsPhoto / PIXTA)

交通事故の被害者が「救護不要」と現場を立ち去る…ドライバーはどう対応すべき?

交通事故の被害者が立ち去ってしまった場合、どのように対応すればいいのでしょうか。このような質問が弁護士ドットコムに寄せられています。

ある人は、自転車で運転中に十字路で右側から来た女性に気づかず接触しましたが、被害者の女性は怪我をしているのにも関わらず何度も「大丈夫です」と言い、救急車を呼ぶのを拒んで立ち去ってしまったそうです。

困惑した状態で帰宅しましたが、被害者のケガが気になり警察に届け出ました。相談者は「救急車を呼んでいなかったり、家に帰ってしまったことで、ひき逃げになるのでは?」と心配しています。

また、被害者に擦り傷を負わせてしまいましたが、こちらの連絡先を伝えただけでお互いに立ち去ってしまった人もいるようです。

相談者は警察と保険会社に届け出ましたが、被害者は届けを出していないようです。相談者は被害者へ謝罪と補償をしたいと考えていますが、「このまま何もないと警察で対応してくれなくなるのでしょうか?」と不安を抱えています。

被害者が自ら立ち去ってしまった場合、事故を起こしたドライバーはどうすればよいのでしょうか。中村友彦弁護士に聞きました。

●被害者の言う「大丈夫」を鵜呑みにしない

——被害者が「大丈夫」と言っていれば、問題にならないのでしょうか。

交通事故を起こしたドライバーは、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じるほか、警察官に対し事故の発生日時等の報告をしなければなりません(道路交通法72条1項)。

そのため、交通事故があった場合には、まずは負傷者の確認や救急車の手配をするなどし、すぐに警察にも報告しなければなりません。事故を起こしたドライバーが救護等の措置義務・報告義務を果たさずに事故現場から立ち去るケースがいわゆる「ひき逃げ」です。

ほとんどの自動車は1トン以上の鉄の塊であり、事故で衝突を受ければ、まずは大なり小なり負傷していると考えるべきです。むち打ち症など、翌日以降に出てくるような症状もあります。

救護等の措置義務は、高いレベルで求められており、負傷が軽微なため被害者が医師の診察を受けることを拒絶したような場合を除き、医師の診察を受けさせる措置を講じることなく自身の判断で救護を不要とすることは許されません(最高裁昭和45年4月10日判決)。

被害者が明確に拒絶した場合には救護義務は問題になりませんが、拒絶もよほど確実なものでなければならず、被害者が「大丈夫」と言っていただけでは、救護等の措置義務はなくなりません。

——被害者が治療を拒んでいる立ち去ろうとする場合、どう対応すべきでしょうか。

被害者に対して医師の診察を受けることを強制することはできませんが、交通事故が生じた後、相手方が診察を拒絶する場合であっても、警察官がくるまで事故現場に留まるように説得すべきです。

警察官の前でも、相手方が診察を拒絶しているなら、後日、救護義務違反が問題になることは通常考えられません。

●警察へ報告しないと最悪の事態になりうる

——被害者が立ち去ってしまい、事故から数時間後に警察に届け出た場合、報告義務違反になるのでしょうか。

道路交通法72条1項は、「直ちに」行うことを求めており、報告義務の場合には、救護等の措置以外の行為のための時間をかけてはいけません。いったん帰宅して、事故から数時間後に警察に届け出ても、報告義務違反になります。

いったん帰宅してから報告した場合、警察官によっては、その場でかなり厳しい対応をされるとは思いますが、報告しないよりもずっと良いです。

遅れてでも報告することのないまま、後日、負傷していないと思っていた相手方が人身事故の届出を警察に出し、自宅に警察官がくるような事態になると最悪なことになります。

私の扱った事案でも、事故直後に相手方が謝ってきたことや、軽微な事故で怪我をしていないと安易に思いこみ、自宅に帰って警察にも報告していなかったところ、相手方が人身事故の届出を出したことで、救護義務および報告義務違反により、刑事責任(正式裁判)を問われたり、行政処分(欠格期間3年の免許取り消し)を受けたものは複数あります。

どの事案も、とりあえず事故現場ですぐに警察官を呼んでいれば、まったく問題が起こらなかったものでした。

——どんな軽微な事故であっても、警察への報告を欠かしてはいけませんね。

交通事故の相手方が事故現場から立ち去ってしまった場合であっても、事故を起こしたドライバーは、すぐに警察を呼んで事故や相手方が立ち去ったことを報告し、救護義務等の違反で刑事責任を問われることのないようにすべきです。

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この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

中村 友彦
中村 友彦(なかむら ともひこ)弁護士 OSAKAベーシック法律事務所
OSAKAベーシック法律事務所所属。幅広く扱っているが、交通事故の被害者側の案件が多く、加害者側・交通事故に関する刑事弁護等も扱っている。

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