日産自動車のカルロス・ゴーン氏(62)が、社長と最高経営責任者(CEO)から退く。
日産自動車のリリースによると、社長交代は約17年ぶりで、ゴーン氏は4月1日付けで退任する。後任には、西川廣人副会長が就任する。ゴーン氏は引き続き代表権のある会長となり、グループの連携強化などに集中するとみられている。
新たに社長が選任されたのに、ゴーン氏が「代表権ある会長」という役職につくことにはどのような意味があるのか。会社法に詳しい今井俊裕弁護士に聞いた。
●「社長」や「会長」は、会社法に定められた地位ではない
「取締役の内でも、代表権のある者とない者とが通常は混在しています。代表権がある取締役は、特に社内的に制限がない限りは、会社法上は会社の業務全般を執行し、対外的には会社を全面的に代表します」
今井弁護士はこのように指摘する。では、「社長」や「会長」といった名称に何らかの法的意味はあるのか。
「社長や会長という地位は会社法上の地位ではなく、会社の自治規範である定款で定められた地位です。社長の地位にあるからには、同時に代表権のある取締役であることが通常です。
会長の地位にある者が、果たして代表権のある取締役であるのか、そうではなく代表権のない取締役であるのかは、定款で特に定めがない限りは、その会社の取締役会で個々に決定すべきことです」
社長という立場から退くということが、同時に、会社を代表する地位を失うという意味をもつということではないというわけだ。
「そうですね。社長から会長に退く形態もよくありますが、その場合に代表権まで失うかはケースバイケースです。
今回のように社長を退いて会長に就任するが代表権は失わない、というケースもあります。
つまり、『社長を引退した後に名誉職や顧問職的な地位に退く』ということではなく、『依然として経営の実権者の地位にある』ということを意味します。
ゴーン氏はルノーや、傘下におさめた三菱自動車も含めて、今後ともより効率的、強固なアライアンスを形成する活動に専心したい、ということではないでしょうか」