子どもを命名する際の情報を調べるアプリ「赤ちゃん名づけ」を提供するリクルーティングサービスは、2016年の「キラキラネームランキング」を発表した。
ランキング1位は「唯愛(いちか、ゆめ)、2位「碧空(みらん、あとむ)」、3位「優杏(ゆず)」だった。この他にも「茉莉花(じゃすみん)」「黄熊(ぷう)」「爽斗(みんと)」など、一見しただけでは読み方が難しい名前もランクインしていた。
親はさまざまな思い入れがあって命名しているのだろうが、いざ、子どもが受験するとなった際に後悔するケースもあるようだ。ネット上のQ&Aサイトには、キラキラネームが受験に不利になると考え、「改名したほうがよいのでしょうか」と質問する人もいた。
相談者は、「キラキラネーム」を子どもに付ける親を避ける学校があると聞き、子どもの受験に不利になると考えたようだ。
名前は子ども自身の能力・資質とは関係ないと思われるが、もし入学選考で、学校が「キラキラネーム」であることをマイナスの要素として評価に組み込んだ場合、問題はないのだろうか。高島惇弁護士に聞いた。
●「不合理な差別」として違法になる可能性がある
「結論としては、入学試験に際し『キラキラネーム』であることを不利に考慮することは、不合理な差別であるとして違法と評価される可能性があります」
高島弁護士はこのように指摘する。なぜだろうか。
「入学試験は、入学希望者の中から、学校の教育理念や教育方針を踏まえて、学生の身分を取得させる適格を有している者を選抜するという目的を有しています。
そして、学校は、事前に公表した募集要項等で定めた評価方法や評価基準に従って、合格者を選抜しなければなりませんが、その評価要素として、試験の成績以外にも、出身高校から提出される調査書や面接結果などを総合的に考慮することが許されています」
キラキラネームであることは、そうした考慮要素としてはならないということだろうか。
「考慮し得る事情は、学生としての適格性を判断するうえで必要な事項に限られます。これと関連性を欠く事情を理由として不利に扱った場合は、不合理な差別であるとして憲法14条1項に違反すると考えます。
今回の場合、戸籍上の名は、通常、入学希望者の両親が名付けたものであって、本人の能力や資質とは無関係な事情です。
そもそも、『キラキラネーム』かどうかの判断基準は不明確であって、選抜担当者の価値観による部分が大きいため、少なくとも公立学校の評価要素としては、関連性を欠いていると言わざるを得ません」
●私立学校の場合は?
私立学校でも結論は同じになるのか。
「とりわけPTAの役割が大きい学校の場合は、学校の伝統や校風との適格性を判断する上で両親の性格等も考慮し、その一資料として『キラキラネーム』かどうかを検討する余地は一応存在するかもしれません。
しかしながら、在学契約の当事者は、あくまで入学希望者である以上、考慮できる程度は極めて限定的であって、合否判定に際し明白に不利に扱った場合は、やはり不合理な差別であるとして違法と評価される蓋然(がいぜん)性が高いのです。
現実問題として、入学選考時に『キラキラネーム』を考慮しているかどうかを外部から識別することは、残念ながら極めて難しいです。
だからといって、このような不合理な差別は決して許されるものではありませんし、万一そのような事態が発覚した場合には、学校環境の改善という観点から、速やかに是正を促す必要があるものと考えます」