「子どもが中学生だけで居酒屋に行くと言っています」
そんな戸惑いの声がSNSに投稿され、さまざまな意見が寄せられました。
投稿によると、卒業記念としてクラスメート同士で居酒屋に行く計画があり、夕方から食べ放題コースを予約。すでに多くのクラスメートが参加を希望しているといいます。
一方で、居酒屋の場所は繁華街。保護者としては「トラブルに巻き込まれないか」「そもそも中学生だけで居酒屋に入っていいのか」といった不安が募ります。
投稿には「ファミレスならいいけど…」「条例に引っかかるのでは?」などの反応もありました。
●居酒屋を利用しただけで「停学」になる?
また、弁護士ドットコムにも、中高生と居酒屋をめぐる相談が寄せられています。
私立高校に通う子どもが友人と居酒屋で食事をした際、ソフトドリンクをビアジョッキで飲んでいる様子をSNSに投稿。その後、学校側に把握されてしまったというものです。
実際には酒類を飲んでいなかったものの、居酒屋を利用したこと自体が「停学」の対象になるのか悩んでいるといいます。
20歳未満の飲酒が禁止されていることは広く知られていますが、「中高生だけで居酒屋に入ること」そのものは、法的に問題ないのでしょうか。寺林智栄弁護士に聞きました。
●「違法」ではないが注意が必要
──中学生や高校生が、保護者同伴ではなく、友人同士だけで居酒屋に入店し、食事をすることは、どのような法的リスクがありますか。
中学生や高校生が、保護者を伴わずに友人同士で居酒屋に入り、食事をすることは、一律に「違法」とまではいえません。ただし、法的にはいくつか注意すべき点があります。
まず、国の法律として、「二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律」(20歳未満飲酒禁酒法/旧:未成年者飲酒禁止法)があります。この法律は、20歳未満の飲酒を禁止するとともに、酒類を販売・提供した側にも罰則を科しています。
そのため、居酒屋側は、たとえ20歳未満の人が「食事目的」で来店した場合でも、誤って酒類を提供してしまうリスクを常に負うことになります。このため、店によっては20歳未満のみの入店自体を断る運用をしているケースもあります。
●子どもだけの夜間外出は「条例」で制限されることも
──子どもだけで夜間に外出すること自体は許されるのでしょうか。
この点は、各都道府県が定める「青少年育成条例」と関係してきます。多くの自治体では、深夜(おおむね午後11時以降)に、保護者の同伴なく青少年を外出させたり、風俗営業的な場所に立ち入らせたりすることを制限しています。
居酒屋は、地域や条例の解釈によっては「青少年の健全育成上、好ましくない場所」と位置づけられることがあります。時間帯や店舗の形態によっては、入店を認めた店舗側が指導や処分の対象となる可能性があります。
特に中学生は、条例上「特に保護を要する年少者」とされることが多く、夜間の居酒屋利用は問題視されやすい傾向にあります。高校生であっても、制服姿での来店は、店舗側から警戒されやすいのが実情です。
●20歳未満に酒類を提供した場合の重い責任
──仮に、店側が中高生であることを認識しながら酒類を提供した場合、どのような法的責任が生じるのでしょうか。
先ほども述べた通り、店側が中学生・高校生であることを認識しながら酒類を提供した場合、その法的責任は非常に重くなります。
まず、20歳未満飲酒禁酒法により、20歳未満であることを知りながら酒類を提供した者は処罰の対象となります。具体的には、店舗の責任者や従業員に対し、50万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、年齢確認を怠っていた場合でも、外見や会話内容、制服の着用などから20歳未満であると容易に判断できたと評価されれば、過失があったとして責任を免れない可能性があります。特に中高生の場合、「20歳未満であることは外形的に明らか」と判断されやすく、言い逃れは困難です。
さらに、都道府県の青少年育成条例に基づき、事業者に対して指導・勧告・店名公表・営業停止などの行政処分がおこなわれることがあります。刑事罰に至らなくても、行政指導や社会的評価の低下という大きな不利益を被るおそれがあります。
●ソフトドリンクをビアジョッキで飲んだら?
──ソフトドリンクをビアジョッキで飲み、その様子をSNSに投稿していた場合、実際に飲酒していなくても、学校側が問題視する可能性はありますか。
結論から言えば、実際に飲酒していなかったとしても、学校側が問題視し、指導の対象とする可能性は十分にあります。これは法的問題というよりも、学校の教育的・生活指導上の判断に基づくものです。
ソフトドリンクをビアジョッキで飲む行為自体は、当然ながら違法ではありません。SNSへの投稿も原則として法的に問題ありません。20歳未満飲酒禁止法は「実際に飲酒したかどうか」が基準です。
ただし、学校の指導では、「実際に違法行為かどうか」よりも、「外形的にどう見えるか」「誤解を招く行動かどうか」が重視されます。
居酒屋の雰囲気がわかる写真や動画をSNSに投稿した場合、第三者からは「20歳未満が飲酒しているように見える」可能性があります。その結果、学校に通報が入ったり、校風や学校の信用に影響を与えると判断されたりすることもあります。
多くの学校では、校則や生活指導の中で、「20歳未満飲酒を疑われる行為」「社会的に誤解を招く行動」「SNS上での不適切な発信」を指導対象としています。そのため、実際に飲酒していなくても、「紛らわしい行為をした」という理由で、注意や指導を受ける可能性は否定できません。
ただし、直ちに停学や退学といった重い処分が正当化されることは通常ありません。事実確認のうえでの口頭注意や投稿削除の指導、保護者への連絡にとどまることが一般的でしょう。
●最も確実な対策は「中高生だけで居酒屋に入らない」
──トラブルを回避するためにはどうしたらよいのでしょうか。
最も確実なのは、中高生だけで居酒屋に入らないという選択です。
居酒屋は本来、酒類の提供を主目的とする場所であり、時間帯や客層によっては大人向けの雰囲気になります。万一トラブルが起きた場合、「なぜその場所を選んだのか」が必ず問われるため、ファミリーレストランなど、年齢に適した店舗を選ぶほうが安全です。
どうしても居酒屋を利用する事情がある場合には、事前に保護者と相談し、同意を得ることが望ましいでしょう。保護者同伴であれば、法的・社会的なリスクは大きく下がり、学校からの問い合わせにも、事実関係を冷静に説明しやすくなります。
また、SNSへの投稿には特に注意が必要です。ビアジョッキや酒類のボトルが写り込んだ写真は、実際にソフトドリンクであっても飲酒を疑われやすく、誤解を招きがちです。20歳未満である以上、「誤解されない行動を選ぶ」こと自体が自己防衛になります。
さらに、制服姿での入店や写真撮影は、学校名が特定されやすく、学校の信用問題に直結します。本人に悪意がなくても、学校側が指導に乗り出さざるを得なくなるケースがある点には注意が必要でしょう。