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「次もiPhone97%」調査結果が話題 若者がiPhoneを選ぶのは同調圧力なのか?
最新のiPhone17はもっとも安価なモデルでも約13万円で、学生にとっては高額だ(アップル公式HPより)

「次もiPhone97%」調査結果が話題 若者がiPhoneを選ぶのは同調圧力なのか?

iPhoneを利用する学生の97%が次のスマホもiPhoneにするーー。こうした調査結果を紹介した日経MJの記事が注目を集めました。

記事によると、iPhoneユーザーの学生500人にアンケートしたところ、97%が「次もiPhoneを選ぶ」と回答し、さらに、6割弱が「iPhoneでないと肩身が狭い」と感じているという結果から、「学生の間には強い同調圧力がある」と指摘されています。

「同調圧力」という言葉は、一般的には「みんなが持っているから仕方なく」とか、主体性がない、といったネガティブな印象で受け取られることが多いように感じます。

しかし、私は、学生らの行動は決してネガティブに受け取られるようなものではなく、ごく自然なことではないか、と感じています。

私は弁護士でもありますが、学習塾や司法試験予備校の講師として、また法科大学院の特任講師として、これまで約30年にわたり教える仕事を続け、多くの学生たちと直接関わってきました。その経験から、この結果について個人的な考察を加えてみました。

●脳は「省エネ」が大好き:考えるのをやめるとラク

記事には「iPhone以外の選択肢を考えたことすらありませんでした」と語る学生の言葉があります。この言葉は、脳の仕組みから考えてごく自然なものです。

私たちの脳は、非常に賢いですが、同時に極度の「怠け者」でもあります。新しいことを考えたり、慣れない作業をしたりする時には、大量のエネルギーを使います。

脳は、生命維持のためにエネルギー消費をできるだけ最小限に抑えようとします。「現状で問題がない」場合には、脳は変化を非常に嫌います。新しいことをはじめることを拒絶し、強制的に変更しようとすれば、大量のエネルギーを消費します。

iPhoneで問題なく生活できているという状況は、まさにこの場合にあたります。

Androidスマホへの乗り換えは、脳にとって大変な「重労働」です。新しい操作方法を覚え、データの引継ぎ方法を調べ、不具合があったときのリスクを考える。 脳がこの変更を拒絶するのは、いわば当然なのです。

次もiPhoneにすれば、操作方法もアプリも友達との連携方法(AirDropなど)も、すべて「慣れたまま」で済みます。これは脳にとって「考えなくていい」という、最もストレスの少ない選択です。

つまり、学生たちが「次もiPhone」を選ぶのは、誰かに暗黙のうちに強制されているというよりは、最もエネルギーを使わずに済む、合理的な選択を脳が本能的に下している状態と考えられます。

●「現状維持」こそが最も安全だと感じる心理

また、先ほどまでの話にも通じますが、人は、「現状を変えることによって失うかもしれない損失」や「後悔」といったデメリットを、得られるかもしれないメリットよりもはるかに恐れる傾向があります(人は利益よりも損失を約2倍強く感じるという「プロスペクト理論」という考えもあります)。

脳は、Androidに乗り換えた場合のメリットよりも、「Androidに乗り換えて、もし使い勝手が悪かったら後悔する」「AirDropが使えず、友達との連絡で手間取ったら嫌だ」といった、現状を変更することによる不安を非常に大きく見積もってしまいます。

iPhoneを使い続ける限り、失敗も後悔もありません。少なくとも、今まで通り、友達とのコミュニケーションは円滑に進みます。

記事中で学生たちが感じるという「肩身の狭さ」も、これらのデメリットを過剰に見積もった結果ではないでしょうか。

それは「皆が持っているから仕方なく合わせる」というネガティブな「同調圧力」という説明よりも、一番ラクで、失敗や損失のリスクがゼロのコミュニティに留まるという、脳の自己防衛本能と説明する方が合理的であるように思います。

●まとめ:iPhoneは「初期設定」になっているからこそ変えたがらない

学生にとってiPhoneは、単なる高性能なガジェットではありません。

それは、親から与えられ、友達とつながり、ストレスなく利用できるという、彼らの生活における「初期設定(デフォルト)」です。

「同調圧力」は、たしかに社会的な現象として存在します。

しかし、それは「皆が持っているから仕方なく合わせる」というネガティブな強要だけでは説明できません。「皆と同じ状態を維持することで、コミュニティでの摩擦や失敗という損失を回避したい」という、誰もが持つ現状維持の気持ちが強く作用していると考えられます。

彼らが次もiPhoneを選ぶのは、「考える労力を最小限に抑え、失敗リスクをゼロにする」という、人間の脳が本能的に下す最も合理的かつ安全な選択なのではないでしょうか。

この強固な「慣れの壁」と「生存本能としての合理性」を覆すには、Androidなどの他社製品が、価格や機能が優れていることをアピールするだけでは不十分でしょう。

学生たちの「考える労力」を上回る、もしくは「現状維持では大きな損失が生じる」と感じさせるほどのメリットを提示する必要があるでしょう。

(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士/小倉匡洋)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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