横浜刑務所に服役していた30代の男性が3月5日、受刑中にゴキブリが入った食事を交換してもらえなかったことなどで精神的苦痛を受けたとして、国に143万円の賠償を求める訴訟を横浜地裁に起こした。
●「受刑者を人間と思っていない不当な扱い」
訴状によると、男性は横浜刑務所に服役していた2023年7月、昼食として出された食事に煮込まれた状態のゴキブリのようなものを発見。刑務所の職員に伝えて食事の交換を求めたが、拒否された。
その後、職員が代わりの食事を運んできたが、その時にはすでに、男性はやむを得ず食事を食べ終えていたという。
訴状では、こうした刑務所側の対応が「『受刑者にはゴキブリを食べさせても構わない』という、受刑者を人間と思っていない不当な扱い」と批判している。
●食中毒発生で非常食に 「規定を大幅に下回るカロリー」
また、元受刑者の男性は刑務所内での食事のカロリー不足についても問題視している。
横浜刑務所では2023年12月に食中毒が発生し、食事を作る所内の工場が操業を停止し、受刑者への食事が非常食に切り替えられたという。
非常食は2023年12月21日の昼食分から2024年1月3日まで続いたといい、男性はその間、非常食のパッケージに記載されているカロリーの数値を記録しており、それによると1日の合計カロリーは少ない日で1409キロカロリーだったという。
訴状によると、刑務所の規定では、男性の年齢や性別に対応する区分として1日当たり2620キロカロリーを与える必要があるとされていたといい、男性は「非常食は前記規定に定められたカロリーを大幅に下回り、それどころか6〜7歳が必要なカロリー程度にしか満たない」と主張している。
●「医師の診察を拒否された」などとも主張
そのほか、男性が反則行為を行ったとして懲罰を受けた際に職員が事実と異なる内容の供述調書を作成したり、体調不良の際に医師の診察を求めたが正当な理由なく拒否されたりしたことなども訴えている。
男性はこれらの横浜刑務所側の対応が、「自由権規約」や「刑事収容施設法」、「国連被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラ・ルール)」などに違反するとしている。
なお、男性は2024年10月に仮釈放されたという。
男性の代理人の佐々木智仁弁護士は「本来、刑務所の職員は受刑者の模範になるべきです。判決が確定した後の処遇は社会的に関心を持たれにくいが、受刑者の更生において一番重要な部分だということを知ってほしい」と話している。
●横浜刑務所「協議のうえ適切に対応する」
横浜刑務所は弁護士ドットコムニュースの取材に「訴状の送達を受けていないが、訴状が送達された際には関係機関と協議のうえ、適切に対応してまいりたい」としている。