サッカー日本代表の伊東純也選手(仏1部リーグ/スタッド・ランス)らが、「性的行為を強制された」と主張する女性2人の「虚偽」の刑事告訴で損害を受けたとして、賠償金約2億円を求めた訴訟の第1回口頭弁論が11月26日、東京地裁(清水知恵子裁判長)で開かれた。
この日は、原告の伊東選手側、被告の女性側双方の意見陳述があった。
伊東選手側は「女性らによる虚偽告訴と一連の報道によって損害が生じた」と主張。女性側は請求の棄却を求めたうえで「大量の飲酒をさせ、朝方、泥酔している女性と避妊具を付けずに性行為に及んだ」「見せしめ目的のスラップ訴訟だ」と反論した。
この日、女性2人は東京・霞が関の司法記者クラブで、初めての記者会見を開いた。女性の1人は「断片的な記憶しかありませんが、性交渉をされたことは間違いない」と語り、改めて性被害は事実だとうったえた。
●双方が刑事告訴して、双方が「不起訴」に
女性らは今年1月、2023年6月に大阪市内のホテルで、伊東選手らから性被害を受けたとして準強制性交等罪で刑事告訴した。『週刊新潮』が報じた。伊東選手側は事実無根だとして、女性らを虚偽告訴罪で刑事告訴していた。
双方とも不起訴処分とされたが、伊東選手側が起こした民事裁判で、伊東選手側は「刑事告訴だけではなく、報道含めた一連の行為を不法行為としている」(代理人の轟木博信弁護士)。
口頭弁論後に、原告、被告双方の記者会見が開かれた。伊東選手側の代理人をつとめる加藤博太郎弁護士は、女性側から指摘がなされた「スラップ訴訟」には当たらないとの考えを示した。
伊東純也選手側の代理人弁護士(2024年11月26日/弁護士ドットコム)
「性被害者の保護が大事なことは理解しているが、被害者を手厚く保護しようとしているのを逆手にとって、被害者として訴えて、男性の生活ができなくなってしまうことは今後防いでいかないといけない。不法行為の追及はスラップ訴訟に当たらないのではないか」
加藤弁護士は「女性側が『性交渉はなかった』と言っている録音もある」などとして、女性を証人請求する考えも明らかにした。
●初めて記者会見に出席した女性2人
準強制性交罪で伊東選手を刑事告訴した20代女性、Aさんは「X選手(伊東選手)から性被害を受けました。絶対に嘘ではありません」と述べた。
「酔いが回り意識朦朧としている中で性行為をされました。断片的な記憶しかありませんが、性交渉をされたことは間違いないです」(Aさん)
女性側によれば、後に、伊東選手側と話し合いになり、Aさんらに計2000万円の賠償金が提示されていたという。Aさんたちは、その話し合いの中で、求めていた謝罪が受けられなかったと話す。
「今も私の希望は変わらず、性被害者として謝罪をしてほしいです」(Aさん)
Aさんは体調不良によって大阪にまで行けず、事情聴取を受けられないまま不起訴処分となったことには納得できていないとも語った。
ホテルでトレーナー男性から性被害を受けて、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になったという20代のBさんは、「目が覚めたとき、ベッドの上で下着を脱がされ、トレーナーの男性から性被害を受けていました」と述べた。
隣のベッドでAさんと伊東選手との性行為を「見た」という。
「しばらくするとY(トレーナー)がX選手(伊東選手)の腕を引いて、私のところに連れてきて、『こっちともやれよ』と言いましたが、私はなんとかX選手が迫ってくるのは阻止できました。これが私が受けた性被害です。これらの事実関係に嘘はありません。嘘なら刑事告訴は絶対しません」(Bさん)
女性側の代理人をつとめる髙橋裕樹弁護士は「女性たちは伊東選手側に一度も金銭の請求をしたこともありません」と話す。
意見陳述では「性被害者として加害者に真摯な謝罪を求めたい。力のある有名人やスポンサーに媚を売る営業道具として、自分たちのように若い女性が利用され、アテンドされ、同様の性被害を受けることを阻止したい」と"女性らの思い"を伝えた。