裁判所ウェブサイトに掲載されている判決のPDFデータの1つに、実際の判決とは異なる誤植があったことがわかった。弁護士ドットコムニュースの取材に最高裁が認めた。間違いは1月20日に修正された。なお、最高裁による紙の判決集には間違いがなかった。
誤植があったのは、建物の売買をめぐる1996年の最高裁判決(最高裁平成8年5月28日第三小法廷判決)。元のPDFデータでは、高裁判決で認められた弁護士費用を「210万円」としていたが、実際は「120万円」だった。
最高裁によると原因は不明だが、判決は2000年まで縦書きだったため、OCR(文字認識)にかけた際、「一二〇」が「二一〇」と誤認識された可能性も考えられる。
修正前後の文言の比較
●影響は軽微だが…相次いで発覚する誤植
この誤植による影響は軽微とみられるが、最高裁判決をめぐっては2021年以降、実際の判決とウェブサイトや紙の判例集の記載とが異なる事例が百カ所以上発覚している。多くは誤字脱字などの単純ミスだが、古い年代ではフレーズ単位で文言が欠落していることもあるという。
最高裁は今後、ウェブサイトに掲載されている大法廷判決を優先して調査し、その結果も踏まえて対象を広げていくかを検討する方針を決めている。
ただ、今回誤植が見つかったのは小法廷判決。まだまだ多くの誤植が潜んでいると考えられる。一方で、裁判所がすべての判決をチェックし直すのはコスト的に現実的ではなく、利用者側も誤植がある可能性を頭に入れておく必要がありそうだ。
この点について、最高裁は「遅くとも2016年4月以降の裁判例については、判決原本のデータを利用している」と説明しており、2016年度以降のPDFデータ、紙の判決集は信頼して良さそうだ。
なお、今回の誤植はツイッターの法律系アカウントが発見。ツイートをみた弁護士ドットコムニュースが民間の裁判例データベースと「最高裁判所裁判集 民事(集民)」で確認し、最高裁に取材した。
最高裁HPの最高裁判決に誤植発見。
— venomy (@idleness_venomy) December 30, 2022
最判H8.5.28集民179-71https://t.co/Clh5p3944u
上告人の請求「弁護士費用一九〇万円」
原審の認定「弁護士費用相当額二一〇万円」(3頁)
となってるけど、請求超えはあり得ない(費目の流用は一応あり得るけど)と思ったら、「一二〇万円」の誤記ですね。