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農業アイドル自死、控訴審も遺族敗訴 当時の所属会社社長「おびただしい数の脅迫、嫌がらせに怯える日々」を振り返る
判決後に会見を開いた当時の所属会社「Hプロジェクト」の代表取締役(中)と被告側代理人(2022年12月21日、東京都、弁護士ドットコム撮影)

農業アイドル自死、控訴審も遺族敗訴 当時の所属会社社長「おびただしい数の脅迫、嫌がらせに怯える日々」を振り返る

愛媛県松山市を中心に活動する農業アイドルグループ「愛の葉Girls(えのはがーるず)」のメンバーだった大本萌景(ほのか)さん(当時16)が自死したのはパワハラや過重労働が原因だとして、遺族が当時の所属会社などを相手に、約9268万円の損害賠償を求めた裁判の控訴審判決が12月21日、東京高裁であった。

志田原信三裁判長は、請求棄却とした一審東京地裁判決を支持し、控訴を棄却した。

判決後、当時の所属会社「Hプロジェクト」の代表取締役と被告側代理人が会見を開いた。佐々木貴浩社長は「控訴審判決により、私たちが認識し、訴訟において主張し続けてきた事実こそが真実であったと、証明されたものと考えています」と話した。

●判決の内容

判決などによると、萌景さんは2015年6月、中学2年の時に「愛の葉Girls」のオーディションを受け、所属会社となる「Hプロジェクト」と契約。同年7月から研修生として、2016年7月からはレギュラーメンバーとして活動し、2018年1月頃にはグループリーダーに就任したものの、同年3月21日に自死した。

遺族側は訴訟で、(1)グループで過重な活動をさせていたことなどにより、正常な認識等が著しく阻害される精神状態にさせた、(2)全日制高校進学費用12万円の貸付けを約束したのに、納付期限の直前に撤回すると告げた、(3)社長がグループの活動を続けないのであれば違約金1億円を支払えとの発言をした、という一連の違法行為によって萌景さんが自死したと主張した。

控訴審では、仮に一連の行為と自死との間に因果関係が認められなかったとしても、生前に精神的苦痛を受けていたとして、慰謝料請求を追加した(予備的主張)。

東京高裁は、(1)正常な認識等を阻害された状態にあったとは認められない、(2)指導の範疇を超えるものではなく違法といえない、(3)社長が発言をしたと認めることはできない、と一審の内容をほぼ踏襲。予備的主張も「成立を認めることができない」として、請求を退けた。

●「おびただしい数の脅迫、嫌がらせに怯える日々」

2018年秋の提訴報道後、佐々木社長は深刻な誹謗中傷にさらされた。佐々木社長の子どもの画像と共に「人殺しのくそ」と書かれたり、「マリファナや大麻を栽培している会社」と書かれたりした。会社などにはゴミや注文していないものが届き、中には「萌景さんと同じところにいけ」と書かれた果物ナイフ入りの小包もあったという。

「安易な報道により、弊社が地道に築き上げた信用は地に落とされ、私はもちろんのこと、弊社のスタッフや家族に至るまで、おびただしい数の脅迫、嫌がらせに怯える日々を送りました」(佐々木社長)。

被告側代理人の渥美陽子弁護士は、「明らかに理由のない請求だと確信していたので、一審、控訴審判決は当然の結果と考えていましたが、ここまで4年間と非常に長い時間がかかった。関係者の皆さんは苦しい時間を乗り越えたものと思う」と話した。

会社側が遺族や弁護団などに対し、提訴時の記者会見の名誉毀損などを理由に損害賠償を求めている裁判は、2月28日に判決が言い渡される予定。

渥美弁護士は「提訴時にリーガルファンディングも合わせて大々的に記者会見をしたことで、悪徳事務所対かわいそうな女の子という構図がメディアによっても作られてしまったところはあると思う。遺族側の主張に沿った形で多くの報道がされたことは非常に残念だった。一連の提訴、記者会見、報道が、愛の葉ガールズを取り巻く人たちに対して、深刻で重大なダメージを与えた」と振り返った。

●遺族側「上告を含めしかるべき対応を検討」

遺族側は、代理人が共同代表理事を務める「日本エンターテイナーライツ協会」のウェブサイトで「ご遺族側としては、この結果を承服することはできないため、判決文を十分に精査し、上告を含めしかるべき対応を検討してまいります」とコメントを出した。

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